内容説明
「死は死ではなく、生の為の静止期間であった」(「若水の話」)―。折口信夫が“古代研究”として、国文学と民俗学を辿って明らかにしたのは、「魂」の死生観が古代人に存したことにあった。「外来魂」をキーワードに「死と再生」を説く折口は一方で、古典解釈や沖縄民俗探訪から「常世・他界」という古代人の世界観を論じる。従来の死生観が問われている現在、折口信夫の死生観と、それを反映して書かれた小説「死者の書」を収録する。
目次
「魂」の死生学―折口信夫の「死と再生」論(小川直之)
折口信夫と鎮魂の祭儀(新谷尚紀)
山のわざおぎ―湯立て神楽の常世観(金子遊)
折口信夫「論考+小説」(死と再生;常世と他界;小説 死者の書)
著者等紹介
小川直之[オガワナオユキ]
1953年、神奈川県生まれ。國學院大學文学部文学科卒業。博士(民俗学)。國學院大學・同大学院教授。南開大学(中国)客員教授。日本各地の伝承文化のフィールドワークと研究、中国の少数民族、台湾、インドなどの民族文化研究とともに、折口博士記念古代研究所(國學院大學)で折口信夫研究を進めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MASA123
14
折口信夫の論文14編と小説「死者の書」が収納された本。編者である小川直之と他2名のエッセイ3本が、前座演奏のように冒頭に置かれている。編者による解説はとくになく、折口の論文が14本つづき、最後に「死者の書」がトリとして配置されている。 とくに意図していなかったが、先に、巻末資料の年表を見ておいたので論文の発刊年がわかってよかった(14編は発刊年順番に並んでいない)。年表から、明治大正昭和にかけて、多くの文化人と交流していたことがわかるが、柳田国男との交流がもっとも濃密だ。>>コメントにつづく 2025/07/22
うえ
4
折口信夫の論文および小説のセレクション。イントロダクションとして小川直之「魂の死生学」新谷尚紀「折口信夫と鎮魂の祭儀」金子遊「山のわざおき」が収められている。新谷「折口の説く鎮魂の祭儀とは、たまふりという、外来魂を来触・密着させる儀礼であり、たましずめといわれるように、内在魂となった威力ある天皇の霊魂が必要に応じてその霊威力を発揮する、そして、みたまのふゆといって増殖した天皇の内在魂は、その分霊が臣下や氏人に分かち与えられ、臣下や氏人はその恩寵を蒙ることとなる、というものである。」2024/10/18
ekura
0
小川直之・編。小川ほか三人の解説とともに、折口のまだしも読みやすい論文15編と、小説『死者の書』を現代かなづかい・新字体で収録。「折口に関しての入門書を読んだ後のステップアップ」に最適だろう。2018/04/20