内容説明
詩誌『薔薇・魔術・學説』『衣裳の太陽』などで1920~30年代文化を牽引しながら、志なかばで戦没した“幻の詩人”の再評価を試みる、初の全作品集。
目次
1 詩文集(画家の夢;二階より;祭礼小景(二篇) ほか)
2 翻訳集(D´ECOUVERTE DES PATTES DU SPHINX en 1926(ジヤン・コクトオ)
J’RAI VEUX‐TU(バンジヤマン・ペレエ)
ポオル・エリュアル詩抄 ほか)
附録(訳者の言葉(冨士原清一訳、ダンディ『ベートーヴェン』より)
冨士原清一のこと(高橋新吉)
冨士原清一に 地上のきみの守護天使より(瀧口修造))
著者等紹介
冨士原清一[フジワラセイイチ]
1908年、大阪に生まれ、1944年、朝鮮木浦沖海域にて没する。詩人、翻訳家、シュルレアリスト。法政大学法文学部卒業。同大予科に在学中から先鋭的な詩作、翻訳、主宰詩誌によって注目され、瀧口修造らとともに日本のシュルレアリスム運動の中心的な役割を担う
京谷裕彰[キョウタニヒロアキ]
1972年、兵庫県に生まれる。詩人、批評家。詩誌『紫陽』編集発行人(2003‐11)、詩誌『エウメニデス』同人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
51
大正から戦前にかけて活躍したシュルレアリスムの詩人、その業績をまとめた一冊。シュルレアリスムは象徴詩もそうなんだけど、「解剖台の上でのミシンとこうもりがさ」や自動筆記に代表されるように、意図的に言葉の繋がりを断っている部分があるので情景が想像し辛く少々苦手。ただこの著者の場合、その言葉の連なり具合から奇妙な透明感を感じることが出来る。その空気感が何とも魅力的。あとこの人『薔薇魔術学説』で石野重道や稲垣足穂との繋がりもあったんだ。全ての詩、翻訳、詳細な年譜と知られざる詩人の全てを網羅した一冊でした。2020/03/23
フム
19
日本にシュルレアリスムをもたらした詩人、生前一冊の詩集も出さないまま、太平洋戦争に徴兵され、36才の若さで世を去った、「幻の詩人」である。自作詩が47篇、詩文集の冒頭の「画家の夢」は17歳、北野中学校在学中に校友会誌に掲載されたものだと言うが、夏の午後の幻覚なのか夢なのか、シュルレアリスムの絵画が浮かぶような作品になっている。1935年『詩学』八号に発表した「襤褸」は自作詩の発表では最後になった。まだ27才である。仲間の詩人達が治安維持法容疑で逮捕されるなど文学にとって不幸な時代である。才能が潰された時代2019/12/03
内島菫
17
「襤褸」というタイトルの詩が4つあり、田中宏輔さんの方式を連想した。冨士原清一の場合は、『襤褸』と題するノートに詩を書き綴ってもいたという(そのノートは現存しないそう)。17歳のときに書いた詩が「画家の夢」というだけに、初期の詩には乱反射する色彩の魔術師の趣がある。「青蠟色に塗られた高層建築の群れからは、いち様にあはただしく窓が落ち始め」というイメージが素晴らしい。「アルフアベ」という表記、「ほつかりと白百合がひらく」という表現も面白い。「私はいくたびかわたくしをあなたとして理解されたい欲望をもちました」2019/10/03
チェアー
10
シュールレアリスムの詩は難解でこころに心象風景を作るにも難しい。だが、時代に違和感を持ち、自分が自分であることにすら疑いを持ったことはうかがえる。その詩人が最も唾棄すべき戦争で亡くなったという事実は何を語るのか。2019/10/23
warimachi
1
珍品の類。実作を評価されることに拘らなかったそうだが、もっと書いてたら知られてただろうな。2020/02/13