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内容説明
第二次世界大戦直前のポーランド。ヒトラーによるホロコーストが目前に迫るなか、作者シンガーを彷仏とさせる主人公アーロンは、幼なじみのショーシャと再会する。なぜか彼女は二〇年前に別れた少女の頃とほとんど変わらぬ姿だった。愛、信仰、そして生の苦しみについて問いかける、イディッシュ作家シンガーの円熟期の傑作。
著者等紹介
シンガー,アイザック・バシェヴィス[シンガー,アイザックバシェヴィス][Singer,Isaac Bashevis]
1904年、ポーランドのワルシャワ郊外でラビの子として生まれる。25年から、イディッシュによる短編小説を発表しはじめる。35年に、兄で作家のイスラエル・ジョシュア・シンガーをたよってアメリカへ渡る。その後もイディッシュで作品を書き続け、78年にはノーベル文学賞を受賞した。長篇小説、短篇小説、童話、回想録等、多数の作品が英訳されている。91年にアメリカで亡くなった
大崎ふみ子[オオサキフミコ]
1953年生まれ。明治大学大学院文学研究科博士後期課程退学。鶴見大学教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
らぱん
49
①これをどう読んだらいいのか。表面上の物語は難しくはない。要約してしまえば、幼なじみの少女と大人になってから再会し結ばれる話で、少女はホロコーストで失われた故郷の象徴でもあるが、主題は哀惜や郷愁や鎮魂だけではない。「文学の目的は時の消滅を阻むこと」とは書かれた文字によって事象や人物を永遠の存在にする意味とともに、ユダヤ的な概念を示しているように思う。彼らの時間は過去から未来に向かって流れるものではなく無限の今の連続であり、もとより永遠を生きており、彼らの神と教義は記憶し記憶されることを重要としている。↓2020/03/13
ヘラジカ
41
言うなれば純真無垢なる少女とのボーイ・ミーツ・ガール的な邂逅と恋愛を核にした一人の作家の成長譚である。第二次大戦直前という時代には勿論悲壮感や焦燥感が感じられるものの、「ホロコースト前夜」というにはあまりにも長閑やかな印象があり、重点的に語られる作家論や宗教論は、いずれ訪れる惨禍と結び付けて読めば良いのか切り離した方が良いのか判断が難しい。恐らくそのどちらもなのだろう。ナチスの足音迫るなか些事(に近い出来事)にかかずらう喜劇的なエピソードで終わるだけにエピローグは衝撃だった。やはりこれが現実なのか、と。2024/02/12
マリリン
28
死んだ言語(言語と認められないものも含め)と、ホロコーストの中で育てられ、否定され殺戮されても生き続ける魂の誇りのようなものを感じた。表題「ショーシャ」は、少女のまま成長が止まってしまった純真無垢のような女性。私、アレーレ(ア-ロンでありツツイク)は幼い頃の出会いを育み結ばれる。多くの祝福を受けたわけではないと感じたが(周囲は否定的な感もあったか)特にふたりが新婚当時過ごした様は、読む側に甘美な時を与えてくれる。この作品、特に後半第14章以降は深く静かな感動がこみ上げてくる。印象に残る良い作品だった。2020/06/15
ぺったらぺたら子
19
時というのものは1冊の本であって、後戻りは出来ないけれど、そこに刻まれた人達は、言葉は決して消え去りはしない。我々はその本の中の違うページに、いつまでも同時に存在している。そんな主題を響かせつつ描くホロコースト前夜、ワルシャワのユダヤ社会。消え行く風習や文化の数々、暮らしたアパート、近所の人達、商店、死んだ妹。主人公は有利な申し出を全て断り、少女のまま発達の止まった無垢な幼馴染のショーシャとワルシャワに居残る決意をするのだが、、。日本の無頼派の香りを感じたのは私だけなのか。ふと安吾の『白痴』を思ったり。 2019/09/22
ぐうぐう
12
ホロコースト前夜のワルシャワを描いた小説と知って、身構えて読み始めたところ、その意外な展開に驚いた。アイザック・B・シンガーは、自身の体験を投影させながらも、直接ホロコーストの悲劇を記すのではなく、ヒトラーの登場や戦争によって消失してしまった世界を生き生きと活写することで、死や不在の大きさを知らしめ、そしてさらには亡くなった者達への哀切を乗り越えた慰めへと物語を昇華させている。それは、悲劇を悲劇のままに描くことよりも、イマジネーションを駆使して物語を編むことこそが、小説家の務めであると言っているかのようだ2009/06/19
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