内容説明
戦時下のパリ。ノーベル文学賞作家が紡いだ、100年読み継がれる「悲恋」の物語。
著者等紹介
ロラン,ロマン[ロラン,ロマン] [Rolland,Romain]
1866‐1944。フランス中部のニエーヴル県クラムシーに生まれる。1880年パリに転居。エコール・ノルマル・シュペリウール(高等師範学校)卒業と同時に歴史の教授資格試験に合格。教鞭をとる傍ら戯曲や音楽評論を発表し、1913年に小説『ジャン・クリストフ』がアカデミー・フランセーズ文学大賞を受賞。1914年8月、スイス滞在中に第一次世界大戦が勃発、この地で戦闘中止を訴えた。1916年ノーベル文学賞受賞。戦後は反ファシズム活動に参加、第二次世界大戦中はナチスに抗しながら執筆を続けた
渡辺淳[ワタナベジュン]
1922年12月三重県生まれ。東京大学文学部仏文学科卒業。東京都立大学名誉教授。仏文学者・(とくに演劇・映画)評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mt
29
戦禍が広がるなか、ピエールとリュースは地下鉄で出会った。最後は痛ましい結末が訪れるが、それだけの悲恋物陰ではなさそうだ。ブルジョア階級に生まれたピエールは、国家権力を神聖化する父、敬虔なクリスチャンであり戦争に肯定的な母のもと、「情愛は大きいが親密さは皆無」な家庭に育つ。貧しい純朴なリュースと知り合い、まだ無垢なピエールは、一層戦争から意識を遠ざける。反戦を貫いた著者は、空襲の音以外、戦争の細部を書かなかったが、恋人に忍び寄る暗い影を際立たせるため、家庭と戦争社会から二人を孤立した世界においたのだろうか。2016/08/31
かもめ通信
22
書評サイト本が好き!を通じての頂き物。1918年のドイツ軍によって空爆を受けるパリの街を舞台に語られるのは,数ヶ月後に徴兵されることが決まっている悩める青年ピエールと貧しいながらも生きることにひたむきなリュースの愛の物語だ。ロマン・ロランは,この2人の架空の人物を実際にあった出来事に遭遇させることで,戦うことのむなしさ,戦争の悲惨さを際立たせる。そしてもちろん愛も夢も希望も,なにもかも奪い取られたのは,この若い2人だけではなかったのだと,時を経た今もその著作を通して読む者に訴え続けている。2016/01/05
たまきら
16
どこにでも芽生えうる、純粋な若者二人の清らかで激しく、せっぱつまった愛。戦争を憎み、反対し続けた著者によるこの短編には、今の時代の若者にこそ読んでほしい、という訳者の強い情熱が傾けられていて、胸が熱くなります。角川さんの言葉は、文庫本の最後に掲載されていますが、こうして読み返すと真の愛国心とは何か、を考えさせられます。戦争しか知らずに育ち、亡くなった全ての若者たち・子供たちを想いつつ。2016/07/26
さや
16
これほど美しい愛の物語が他にあるだろうか。完璧な愛は2人の無情な死によう完成されたようだ。戦争の中、出会うべくして出会ったふたり。ただ行きたいと望む中で少しの幸福を願って何が悪い?不自由な戦争な時代でひたすらに互いの愛を深める姿はただひたすらに美しい。戦争の時代を真摯に生き抜いたロランだからこそ書ける物語であった。2016/02/19
じゅん
13
オフ会でいただいた本。戦時下における男女の恋愛。結末は予測できていたけど、やっぱり切ない。ずいぶん昔の本だが、今の時代にも必要な一冊。2016/11/24