内容説明
個性を消す再開発、みなと同じ幸せを迫る閉鎖性…それでもこの地を愛したい!Uターン・アラサーライターの“第二の青春”逡巡記。
目次
プロローグ 失われた「寂しい富山」
第1章 迷走上京物語
第2章 都落ち、アラサー、独身女の憂鬱
第3章 個として生きるシンボル、総曲輪ビリヤード
第4章 「富山、めっちゃおもしーから」
第5章 開かれた異界としてのドライブイン、日本海食堂
第6章 新世代カルチャー生む西別院裏、長屋界隈
第7章 ワイルドサイドをゆくブルースシンガー、W.C.カラス
第8章 拝啓、フォルツァ総曲輪様
第9章 ここでしか会えない人
長めのエピローグ 曇り空の下で
著者等紹介
藤井聡子[フジイサトコ]
1979年富山市生まれ。東京で雑誌編集者として勤務後、帰郷。ピストン藤井のペンネームで、富山ならではの個性の強い場所や人を探るライター活動を開始。2013年ミニコミ『文藝逡巡 別冊郷土愛バカ一代!』を刊行。話題を集め、地元テレビやラジオへ活動を広げる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
98
全国の地方都市が落ち込みつつある姿を案じるような題名が気になり読んでみた。著者は20代を東京で映画監督や編集者など文化的香りのする職業を求め10年間を過ごす。結局、何者にもなれず故郷富山に戻り、家業の薬局を手伝いながら自分探しを続け自らミニコミ誌を立ち上げた30代の独身女性。故郷で働こうとか家業を継ごう(そもそも家業などないが)とか,微塵も考えず、能天気に社会人となった爺さんとは年代も人生観も類似点は全くなく実感がわかない。それでも、故郷で文化的活動を盛り上げていくことに打ち込む姿勢は共感できた。2022/01/10
アキ
77
映画監督になるのを夢見て富山から22歳で東京に行くも、映画雑誌から音楽雑誌の編集者を経て、29歳直前で地元に戻る。当初地元になじめず、居場所もなかったが、48歳でデビューしたW・C・カラスとファルツァ総曲輪でイベントをやる内に自分のやる事が見えてきた。「食堂街がなくなっても大将と俺たち客さえいればいい。結局店は人が作るもんじゃないけ?」亡き島倉の言葉が背中を押してくれる。私とは、確固たる自我があるわけではなく、今まで出会ってきた人たちで形成されてるんだ。”藤井聡子”と名乗ることは、覚悟ができたという証明。2020/01/29
とよぽん
43
藤井聡子さんに会いたくなった。彼女の郷土愛は、一度都会に出て戻ってきた人の、複雑な思いがマグマのように熱を帯びて噴出したもののように感じた。ライターとして取材をしながら魅力的な人たちに出会い、ついに本書を出すに至った道程に引き込まれた。日常に流されない、地に足の着いた感覚が今後ますます磨かれていくことを藤井さんに期待する。どこにでもあるどこかになりつつある富山、その危機感を私も感じるから。2020/03/13
Roko
31
地元で暮らして文句を言い続けていても、このままでいいと思っていても、結局は何も変わらない。なぜなら自分に疑問を持っていないからだということに気づいた藤井さんは、富山での暮らしがそれなりに面白いし、もっと面白くする方向へ自分から動きださなければならないということに気づきました。長年親しんできたあの町並みを壊して、都会のコピーみたいな町にされてしまったと思うと悔しくて仕方ない。自分たちの居場所はここにあるはずなんだから。自分たちの居場所を作ることができるのは、自分たちだけなのだと、今日も駆け回る藤井さんです。2023/11/08
ポテチ
26
富山県民でなくても響くのは、あらゆる場所というのは人が作るものだからだ。自分と向き合うことは人と向き合うことだからだ。汎用性の高い箱の中にいてはいつまでも自分のアクは出せない。箱の外の他者を想像し、お互いの落としどころを見つけることが、"開く(伝える)"ということ。著者は閉鎖的と思われる地元に帰りここで自分の箱を開いたのだと思う。2020/01/23