内容説明
流れ去る日常にばら蒔かれた、表現のたね。私たちはれを掬いとれるだろうか?
目次
表現のたね
1章 記憶(ホトリの偶然;選び採取られた日常;インサート・リライト;ズレの創作)
2章 感覚(秘密のボタン;家具を鍛える;音楽と言葉が織りなす共感覚;免許講習演劇;椅子を置く;観光者のまなざしを手に)
3章 揺らぎ(捨てずに離れる;信仰に裏切られたこと;ショーしゃんの45日間;通院と旅;ピンクフラミンゴが見えるあの小屋から)
4章 フローな日常(炊飯の境目;掻くこと;カテキョーと応援;25cmの風景;バック転改め園芸屋の撒水;駅は育む;雨の「通過」表示)
著者等紹介
アサダワタル[アサダワタル]
1979年大阪生まれ。作家、ミュージシャン。自称“日常編集家”。2002年、バンド「越後屋」のドラマーとしてNOISE McCARTNEY RECORDSよりCDをリリース。2003年以降、サウンドユニット「SjQ」(HEADZ/cubicmusic)のドラム担当と平行して、ソロプロジェクト「大和川レコード」始動。2005年に自主レーベルより1stCD『選び採取られた日常』をリリース。2000年代後半は、地域コミュニティに関わるアートプロジェクトの企画演出や、小学校などを舞台にした音楽ワークショップを実施するなど、より日常生活に根ざした活動に移行する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チェアー
11
日常のちょっとした切れ目からのぞく非日常を切り取る。電車を待つ列に向かって、通路の「穴」を無理やりあけさせるおばちゃんの話は絶品。みんな感じていることなのに、当たり前と思い込もうとしていることは多いなあ。2016/10/03
number
3
#本との土曜日 というイベントで、#新城劇場 さんから勧められて。だいぶ積読になってしまったけど、ようやく辿り着きました。あまりの平凡さに最初は物足りなく感じたものの、徐々に風景の色や匂いや音が感じられるようになってきて、読み終わる頃にはじんわりと愛おしい気分に。誰かの古いポラロイド写真を見たような、映画の断片を音だけ聞いたような、喫茶店で人通りを眺めていたような、弱いけれども不思議な濃さのある読後感。日常をそのまま本というかたちにざーっと流し込んだような粗と味わいがありました。本というよりアート作品。2017/11/23
Ich_co
2
カテゴライズできない本を開いてしまった、と思った。あの絶妙な感覚を言葉としてまとめあげたこともすごいけれど、こういう本を出版しようと思わせたこともすごい。あまりにささやかな主題だから。歌謡曲の歌詞と歌詞が出会ってあたらしいドラマが生まれるくだり、椅子を持って移動する話、ホームレスの橘さんの詩、琵琶湖のほとりの景色、皮膚科の待合室のエピソードが好きでした。この弱さが、明日も生き抜けるかが、ささやかな心配。2016/08/14
きゃしー
1
日常のひとこまを音声、写真、文章で切り取る日常編集家、アサダワタルさんの本。台風の日に読了。雨というわかりやすい「通過」を通して、私たちはたくさんの物事を見過ごしているのではないかというメッセージに、はっとしました。免許更新のときに見る教育映画にだって、その人の人生を創造することができるかもしれない。公園で1日を過ごすだけでも、住み慣れた場所だと思えるかもしれない。そんな表現のたねが、いっぱい詰まった1冊でした。2024/08/31