内容説明
マグニチュード7.9、火災旋風、略奪の横行、囚人解放…。丘の上に逃れた人びとから発せられた流言が行政や軍の動きと乱反射し虐殺へと至った1923年9月の横浜―。「災害史上最悪の事態」の発火点を描く歴史ノンフィクション!
目次
はじめに「それは丘の上から始まった」
第1章 横浜は「虐殺の地」だった
第2章 虐殺は「平楽の丘」から始まった
第3章 大川常吉署長―「美談」から事実へ
第4章 横浜の中国人虐殺
第5章 「9月2日」を追悼する
著者等紹介
後藤周[ゴトウアマネ]
1948年生まれ。1972年から約40年にわたって横浜市の公立中学校の教員を務め、その傍らで横浜ハギハッキョの設立から中心スタッフとして活動。退職後も横浜での朝鮮人・中国人の虐殺事件を検証。その報告書でもある「研究ノート」は150号を超える。『それは丘の上から始まった―1923年横浜の朝鮮人・中国人虐殺』は初めての著書
加藤直樹[カトウナオキ]
1967年東京生まれ。主な著書に『九月、東京の路上で』『TRICK「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(ともに、ころから)、『謀叛の児』(河出書房新社)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイトKATE
27
関東大震災時に朝鮮人をはじめとする虐殺が起きたことは、100年が経ち知られるようになったが、発生源が横浜であったことを追った一冊である。著者の後藤周は研究者ではないが、50年前から横浜で起きた朝鮮人や中国人の虐殺を調べ、数多くの史料を集めて分析している。調査した結果、虐殺が始まったのは地震の翌日9月2日、横浜の南部丘陵地から発生したことを突き止めている。著者の文章は冷静であるが事実を伝えたい意志がある。『それは丘の上から始まった』は、埋もれていた歴史に光を当てることに成功している。2024/08/29
たまご
17
横浜近辺に焦点を当てた,関東大震災後の朝鮮,中国などの人々に対する虐殺の経緯を,著者は一次資料に丹念に当たることで紐解いていきます.詳細が記されていないが「こういうことがあった」.そこから「こうみなせるだろう」,しかしそれは憶測で,そこを埋める資料がない以上断定はできない.このスタンスが潔く貫かれていて,すぐに筋道だった説明に飛びつけなくてもどかしいけど,安心して読んでいられる.事実とそこからの推測を丁寧に分けることの大事さを感じました.2024/01/10
どら猫さとっち
8
関東大震災の後に起きた朝鮮人虐殺は、横浜でも同様だった。デマと虐殺、同じ悲劇が関東に広がった。横浜では、より濃いものだった。横浜で起きた虐殺はどのようなものか、膨大な資料から丹念に調べ上げた悲劇の記録。人災では言いきれない、人間の愚かさ悲しさの奥底。それはもしかしたら、別の時代でも見える醜さ。同じ過ちが繰り返す時代、本書はその役割を大きく担う存在として刊行された。2023/10/28
チェアー
6
関東大震災での朝鮮人虐殺については、東京東部を中心とした記録や記述はある程度まとめられている。その記録でも横浜方面から朝鮮人が襲ってくるとの証言が多い。流言飛語の震源地とみられる横浜については、まとまった本は出版されていなかった。この本は、これまで実態がよくわからなかった横浜での朝鮮人虐殺の実態を明らかにしており、意義深い。2023/11/27
二人娘の父
6
今年ベストとも言うべき作品。歴史と史料への向き合い方が凄すぎる。詳しくはいずれ…2023/11/28