内容説明
韓国第3の都市、家父長制が根強く残る大邱からの脱出を試みるコンジュはエディター志望。ソウル育ちのイラストレーター、ホンヨンは結婚どころか「男なんてもうまっぴら」のはずだった。家族と社会と絶え間なく葛藤し、器用に折り合いをつけられない女たちの友情物語。
目次
大邱の夜
ソウルの夜
エピローグ
著者等紹介
ソンアラム[ソンアラム]
1981年ソウル生まれ。漫画家。高卒認定試験を経て法学部に進むも学外でのマンガ講座に熱中し、卒業後は漫画家への道を歩き始めた。2007年から自伝的な漫画を描く
吉良佳奈江[キラカナエ]
1971年静岡県生まれ。東京外国語大学日本語学科、朝鮮語学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
58
新聞の書評を見て手にしました。マンガはあまり読まないけれど、実に社会性に富んだ作品でした。韓国の、このテーマは語られることが多いけれど、昭和の時代に生きた私には、つい最近まで日本も同じ社会だったと思う。そして、日本はその閉塞から解放されたように見えるだけなのかもしれない。この作品からは声が聞こえるようでした。その声や空気を逃さないように読みました。2022/04/03
竹園和明
38
大都会ソウルに住むホンヨンと家父長制が色濃く残る地方都市大邱に住むコンジュはネットを通じて友となり、コンジュがソウルに出て来た事により更に親交を深める。ホンヨンは夫との諍いが絶えず、またコンジュは母親との確執と仕事の停滞という問題を抱え藻掻き苦しんでいる。2人はたまに飲み互いの愚痴を語るが、常に寄り添っている訳でもなく、相手の非を指摘し気まずい雰囲気になってみたり。…2人の焦燥感や苦悩が見事に伝わる繊細な絵。本作はコミック作品だ。表情の描写がとにかく絶品。読後も残る物凄い余韻は、小説を完全に凌駕している。2022/03/12
ぐうぐう
29
ホンヨンはソウルでイラストレーターをしているが、子育てに追われ、理解のない夫に苛立つ日々を過ごしている。お盆に夫の実家がある大邱へ向かうが、そこでも家父長制が当たり前のように残る夫の家族に囲まれ、息が詰まる思いをする。そんなホンヨンの拠り所は、大邱にいる友人・コンジュとのひとときだ。焼肉をつつきながらコンジュ相手にとめどない愚痴が溢れ出すホンヨンだが、コンジュにも物語が存在する。(つづく)2022/05/01
テイネハイランド
16
図書館本。雑誌クロワッサンで瀧井朝世さんが本書を紹介していたので知りました。欧米のグラフィック・ノベルの場合変に尖っていたりして読みづらかったりしますが、この本の場合自然に読めました。扱っている題材が割合深刻なので(男尊女卑の風習が残るなかでの女性の生きづらさがテーマ)、普通の小説だったら途中で読むのをやめていたかもしれませんが、ふんわりとした絵の雰囲気に救われた感じです。それにしても出てくる男性陣にろくなやつがいないのが気になります。男と女しかいない世の中でもうすこし描きようがあったのでは?2023/11/18
二人娘の父
9
韓国のマンガ、コミックは初めて読んだ。編集後記にもあるように、画の中のハングルは訳した上でそのまま表記されている。例えば電車の中のシーンでは、日本語でいう「ガタゴト」が「덜컹덜컹」(トルコントルコン)であることがわかる。それよりも内容だ。原題「二人の女の話」である通り、二人の女性が韓国社会で生きていく様を、リアルに教えてくれる。ドラマでは見えてこないリアルさがそこにはあり、時にしんどく、時にたくましさを感じる。著者は81年生まれ。あのキム・ジヨンと同世代だ。韓国文化の新しい側面に触れられる作品だ。2022/02/12