内容説明
韓国第3の都市、家父長制が根強く残る大邱からの脱出を試みるコンジュはエディター志望。ソウル育ちのイラストレーター、ホンヨンは結婚どころか「男なんてもうまっぴら」のはずだった。家族と社会と絶え間なく葛藤し、器用に折り合いをつけられない女たちの友情物語。
目次
大邱の夜
ソウルの夜
エピローグ
著者等紹介
ソンアラム[ソンアラム]
1981年ソウル生まれ。漫画家。高卒認定試験を経て法学部に進むも学外でのマンガ講座に熱中し、卒業後は漫画家への道を歩き始めた。2007年から自伝的な漫画を描く
吉良佳奈江[キラカナエ]
1971年静岡県生まれ。東京外国語大学日本語学科、朝鮮語学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
88
大邱の夜でパッコンの物語があり、ソウルの夜ではソ・コンジュの物語が描かれる。時系列で言うと逆になるが、著者のソン・アラムはこれは二人の女の話ではなく、一人の女の話だと強調する。ふたつの物語を書き上げるのに3年を要したらしい。家族と社会と絶え間なく葛藤し、器用に折り合えない女の話。合計特殊出生率0.72の韓国だが、日本も同じような状況であることは昨日ニュースで報道された東京の出生率0.99に表れている。旦那と夫の母親、自分の母親と子どもの世話、その上仕事に頑張るなんて、超人じゃないとできないよ。2024/06/08
fwhd8325
59
新聞の書評を見て手にしました。マンガはあまり読まないけれど、実に社会性に富んだ作品でした。韓国の、このテーマは語られることが多いけれど、昭和の時代に生きた私には、つい最近まで日本も同じ社会だったと思う。そして、日本はその閉塞から解放されたように見えるだけなのかもしれない。この作品からは声が聞こえるようでした。その声や空気を逃さないように読みました。2022/04/03
天の川
56
夜は本音がこぼれる。儒教思想が染みついた国で生きる女達はどの世代も多かれ少なかれ口惜しい思いを胸に秘めているのではないか。社会に出た途端に突きつけられる男尊女卑に根差す様々な理不尽、夫と妻、嫁と姑、母と娘の関係において自分の中に刷り込まれてしまっている規範…ソウルで仕事とワンオペ育児に振り回されるホンヨン、介護していた祖母の死により大邱を脱出しソウルで仕事を探すが挫折の連続だったコンジュ。「全然しんどくないよ、本当に」そう呟きながら生きているのだ。それはジェンダーギャップ指数が韓国より低い日本にも繋がる。2023/08/21
竹園和明
39
大都会ソウルに住むホンヨンと家父長制が色濃く残る地方都市大邱に住むコンジュはネットを通じて友となり、コンジュがソウルに出て来た事により更に親交を深める。ホンヨンは夫との諍いが絶えず、またコンジュは母親との確執と仕事の停滞という問題を抱え藻掻き苦しんでいる。2人はたまに飲み互いの愚痴を語るが、常に寄り添っている訳でもなく、相手の非を指摘し気まずい雰囲気になってみたり。…2人の焦燥感や苦悩が見事に伝わる繊細な絵。本作はコミック作品だ。表情の描写がとにかく絶品。読後も残る物凄い余韻は、小説を完全に凌駕している。2022/03/12
akihiko810/アカウント移行中
37
韓国のグラフィックノベル(漫画)。ソウルで暮らす女性イラストレーター。お盆に夫の実家がある大邱(テグ)へ向かうが、そこでは家父長制が当たり前のように残る夫の家族に囲まれ、息が詰まる思いをし…。「大邱の夜」/息の詰まる大邱を「脱出」し、ソウルで働くことを夢見る「ソウルの夜」の2編。8/10点 韓国に残る家父長制。そこで犠牲になり、生きづらさを抱える女性たちの物語。田舎では女たちは息詰まる生活を強いられる。そしてそこを「捨てて」都心に出れば、苛烈な競争社会に放り込まれる。どちらを選びとっても、 2025/04/25