感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kokada_jnet
52
東浩紀・上田洋子が旧ユーゴを訪問し、前号に続いて論考を執筆。エミール・クストリッツァ監督の「非政治的な作品を作る一方での、本人の政治性発言」が論じられる。小特集「関西とSF」では、小浜徹也・菅浩江・酉島伝法・東による対談と、堀晃による同人誌発表エッセイ「大阪SF八景」が再掲、そして天沢時生の「非京阪神としての滋賀県」論。菅浩江が「今回の大阪万博についてもSF作家に声をかけてほしかった」と。2025/07/16
ころこ
41
東の巻頭文は、セルビアの映画監督クストリッツァがつくった街を訪ねて、90年代の内戦の記憶をめぐる考察をしている。共生の平和は「じつは」の読み替えと切り離せない。それを言いだすのは大抵暴力の被害者なので、平和の記憶は訂正可能性に開かれている必要がある。クストリッツァの民族主義を非難するのは簡単だ。しかし共生の平和を後の判断と独立しつつ、歴史修正主義にも陥らずにどのように記憶すればよいかは、人間の心の問題だけに難しい。本稿の時点では、その結論は出ていない。哲学は「考えること」を考える前提に立つが、平和とは「考2025/05/20
しじみのさしみ
4
東浩紀さんの論考「平和について、あるいは「考えないことの問題」」の後編。クストリッツァのアンダーグラウンドから始まる紀行文がすごかった。歴史修正主義の考察も。単行本になるのが楽しみです。 / 山森みかさんの連載終了。東浩紀さんのコメントを読んで「山森さんは「(イスラエルによる)虐殺ではない」とは言っていないではないか」と思ったが、相対化してしまうことで暴力や虐殺を過小評価することにつながるのかもしれないとは思う。連載はもっと読みたかったです。ありがとうございました。2025/05/27
sucksuckhello
2
特集「一族の想像力」がめちゃくちゃ面白かった。ナショナリズム・共同体主義がバックラッシュ的に勢いづいている現在において、古典の文学作品が共同体の最小単位である家族・一族についてどう考えてきたか、を省みるのは有意義なことはもちろん、単に読んでみたくなる書評ばかりで久々に文学熱が再開した。2025/06/13
ひろ
1
「考えないふりをする」共生の平和は、事後的に「考えなくてよかったのは加害者であるお前達だけだ」という告発(訂正)可能性をはらむ。「忘れる」「考えない」ことに平和の端緒をみるという冒頭の東浩紀の論述と、ほぼ巻末で今回最終回を迎えた、イスラエルに長期滞在している山森みかが記す、ハマスから解放された男性の人質にイスラエル人はホロコーストの影をみたという記述が、奇妙なかたちで共鳴している。東浩紀が次の著書でどのように平和について論じるのか楽しみ。またゲンロンSF大賞になった大庭繭の創作が大変良かった。2025/06/15