出版社内容情報
誤配とは自由のことである――
近くて遠い読者に向けたインタビュー&講演録
韓国の読者に向けて語った2つのインタビューと、
中国・杭州での最新講演を収録。
誤配から観光へ展開した東思想を解き明かす必読のテキスト。
韓国の若手論客パク・カブンによる解説も掲載。
日韓並行出版。
【目次】
はじめに 東浩紀
第1の対話 批評から政治思想へ
第2の対話 哲学の責務
講演 データベース的動物は政治的動物になりうるか
解説 東浩紀との出会い パク・カブン
日本語版刊行によせて 安天
著者紹介
東浩紀(あずま・ひろき)
1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。
専門は哲学、表象文化論、情報社会論。著書に『存在論的、郵便的』(1998年、第21回サントリー学芸賞 思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』(2001年)、『クォンタム・ファミリーズ』(2009年、第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』(2011年)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(2017年、第71回毎日出版文化賞 人文・社会部門)、『ゆるく考える』(2019年)、『テーマパーク化する地球』(2019年)ほか多数。
内容説明
誤配とは自由のことである。正しい宛先に向けて正しく言葉を伝えることは、政治的でも公共的でもないのだ。韓国の読者に向けて語った2つのインタビューと、中国・杭州での最新講演を収録。
目次
批評から政治思想へ
哲学の責務
データベース的動物は政治的動物になりうるか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
33
前半の韓国読者向けに安天が東に行ったインタビューと、後半の東の講演、パク・カブン、安天の解説の二つに大きく分かれています。前半は哲学の知識は要りません。韓国の読者に日本社会の状況を伝えているようでいて、日本の言い尽くされた文脈を一旦離れて韓国から照射された日本社会像の脱構築になっています。注目したのは、日本人と韓国人が社会と政治の話をして、日韓の歴史問題が登場しないことです。「たとえば、10年まえの自分の行動にすべて責任を取れるかといえば、取れないのが人間の本質だし、だからこそ人間には「自由」があるのだと2020/05/03
なつのおすすめあにめ
4
SNSやインターネットに期待できていた10年前の東氏(と、私たち)。リオタールの『ポスト・モダンの条件』について、「理系的な世界観に支配されている現状を批判して文系の価値を再認識しないといけない」という感覚はマルクス・ガブリエルと同じはずだけど、確かdisってた気がするけどな 笑 せっかくの日韓並行出版なのだから、韓国の哲学も誤配されてみたい。そして韓国社会も左右対立が行き過ぎているらしく、SNSの影響だろうか。アイドルの自殺などのニュースはよく見かけるし。いずれにせよコロナ前の時期の内容。今はどうなる?2022/05/01
袖崎いたる
4
東浩紀の哲学の一貫性が見えてきている。この本で語られているのは韓国の読者に向けたもので、文化の違う人々に向けたものという誤配可能性の高い郵便空間が透けている。インタビュアーがなかなか良くて、さすが韓国!みたいになりつつ、東は東でおしゃべりがうまいので、デビュー当時の自分を回想しつつ現代まで通底している思考をさらってくれるのよ。「誤配」と「動物」がキーワードになるわけだがね、だいぶわかりいい。ところでなぜかこの本を読メで検索するとちょっと表紙のデザインが似たサンデルのあれが出てくるのはおもしろいぞ。2020/10/10
toji
3
東氏と安天氏の対話、東氏の講演、安天氏の解説。安天氏の質問がとても的確で、自分がいかに東氏の本を読めていなかったかがわかる。もっと周辺知識を身につけた上で、改めて「動物化するポストモダン」から読み直したいと思った。安天氏の解説は、韓国の現代思想史にも触れている。昔観た映画(特に「タクシー運転手」)や近年の日韓関係などへの自分の理解が深まってよかった。(たとえ誤配であろうとも)相互理解のためにも、こういう本がたくさん出ればいいと思う。2022/10/11
なすび
3
パク・カブン及び安天の、韓国における東浩紀と柄谷行人の受容をめぐる文章が面白い。韓国の現代思想が全然翻訳されてないのは問題で、みんな韓国がどうのこうの言うわりには韓国人がなにを考えているのか知ろうとしていない。戦後補償の問題などの、当事者性と責任がある分野でしか関わろうとしないのは、真の相互理解から遠ざかり、被害者としての韓国の面しか見ないある種のオリエンタリズムになっている。そのような状況の中で現代思想界に一定のプロップスがある東浩紀の新著に韓国現代思想の動向を伝える文章が併録されることの意味は大きい。2020/07/06