内容説明
敗戦翌年に始まる昭和天皇ご巡幸。これをある雑誌がホウキであると諷刺した―。国民と天皇の実質的で礼節ある関係とはいかなるものか?架空の威厳をわらい、自由を愛するアンゴ流の天皇論と反戦論。
目次
天皇陛下にささぐる言葉
堕落論(初出誌版)
天皇小論
もう軍備はいらない
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
災害大嫌い美少女・寺
71
いい本である。坂口安吾の著作は大半が青空文庫で読めるのだが、掲載している4本の文章はいずれも初出誌版である(ご存じ『堕落論』も併録)。なのでかつて読んだ文も興味深く読めた。本棚に並べてみて気付いたが、リトルプレスやZINEのようでありながら、背表紙にきちんと書名と著者名が書いてある。些細な事だが、神は細部に宿り給う。200円+税という価格の中で仕事が躍動している。本として魅力的なのだ。安吾贔屓には嬉しくなってしまう。戦後数年の間に発表された天皇や戦争にまつわる文集だが、どれもまだ通用する味がある。お薦め。2019/03/30
里愛乍
31
平成が終わろうとしているいま、この時期、この節目に。現代著名人の誰よりも坂口安吾に惹かれて手に取った。2019/03/20
チェアー
13
こういう抵抗のしかたもあるんだ。天皇が人間として、「混んでいるときに道を開けてくれる」程度の敬意を持たれていればいいじゃないかと。行く先々で、用意されたきれいなところに通されて、意味不明の相づちをうつよりは。2019/04/29
門哉 彗遙
7
「本当に礼節ある人間は戦争などやりたがる筈はない。人を敬うに、地にぬかずくような気違いであるから、まかり間違うと、腕ずくでアバレルほかにウサバラシができない。地にぬかずく、というようなことが、つまりは、戦争の性格で、人間が右手をあげたり、国民儀礼みたいな狐憑きをやりだしたら、ナチスでも日本でも、もう戦争は近づいたと思えば間違いない。」 坂口安吾が生きてたら、今の時代をどのようにぶった斬ってくれるやろうか?2024/09/30
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
5
戦後直後、国民の昭和天皇に抱く盲信的な敬愛について批判している。作者は国民の態度を「狐憑き」と表現する。実質を伴わず、人が作り出した架空の権威が天皇だという。自分はこれを読み、人間宣言の時期の昭和天皇がどのように評価されていたのかわかった。しかし、息子の明仁天皇は自らの言動で国民からの尊敬を得た。実質を伴う威厳だ。昭和と平成では天皇自身の生き方も随分違い、もはや架空の権威では無くなったのではないかと感じた。しかし、天皇の気持ちを無視して、狂信的に理想の天皇像を求める狐憑き的な極右はいまも存在するのだ。2019/11/23