感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浦和みかん
1
巻頭の、若者の傷つきやすさを掬い取った歌群は面白く読んだが、それ以降の前衛の流れを受けた歌群にはあまり惹かれなかった。つまり、東さんの文庫版解説には共感したが、永田さんの反措定叢書版の解説は、時代的なものもあるんだろうな、共感という形では現れなかった。<自己愛の内にこもれるナルチスを水辺に置きて森ぬけてきし><悲歌ひとつ暁(あけ)の窓にてしたためん微かにふるえいるたましいの><ああ語るな かなしみの森駆けめぐり何に逢わんと君は来たのだ>2018/12/16
yumicomachi
1
昭和50年刊行の第一歌集を平成25年に文庫化したもの。切ない叫びや清澄な祈りによって織り成される熱く清潔な世界。「窓」をモチーフにした歌の多いのが印象的だった。〈透明な朝の光だ 傷ついた窓を開けいまは眼をみひらかん〉〈ああ語るな 炎ゆることなきくれがたを九月の窓に倚りて眺めよ〉〈深淵へひとりふかぶかとゆかしめよ 風立ちてふいによみがえる窓〉〈しずまりていたる九月の窓にみえゆうべとなりてかげゆるる樹々〉〈仄かなる光あつまりいる窓をゆうべの椅子にみていたるのみ〉等。窓は外界をみる心の眼なのであろう。2018/08/21