松本圭二セレクション 詩 1
ロング・リリイフ

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  • サイズ 46判/ページ数 107p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784906738250
  • NDC分類 911.56
  • Cコード C0392

出版社内容情報

朔太郎賞詩人の幻の第1詩集

そうして僕らは 鮮やかなアクリル質の皮膜のなかで 日々の没落を暖めていた
その腐敗物は
恋人の夢の彼方で匂っている
熟れ落ちた柘榴なのだろう
僕はシオカラトンボの飛行に誘われるまま ぬるい湿林に嵌まってしまう
切り取られた空のゆるまりのなかで なおもゆるまってゆく
柘榴
親密な体臭に絆された溺愛の白雲がひかれてゆく ぬるく ほとばしる

絨毯爆撃がしたい

【著者より】
ここに収めた各詩篇の原形となるテクストを書いたのは、
1982年から87年にかけてのおよそ5年間であり、
年齢で言えば17歳から22歳、
たぶん、私がもっとも詩人らしくあった頃である。
それらのテクストを、私は自室でこっそりと書き、長い間隠し持っていた。
『ロング・リリイフ』のような詩集を私は二度と作ることはできないし、
ここに収めたような詩を書くこともできない。
多くの処女詩集がそうであるように、これは一回きりの跳躍である。
ただし私は、これまでの詩集でも一回きりの跳躍を試みたつもりである。
叶うことならば処女詩集だけを作り続けたい。私は詩人の成熟など全く信じていない。

【目次】
夏至
ロング・リリイフ
エレクトリック・フルーツ
ユリス
ナゼル
ヒバリ
ランタン
草卵
どこに配達されるの?
ブギウギしちゃうな
ヒナタに来てよかったね
メガヘルツ
空母
鯊とコチ
ソフト・カートリッジ
クリア

【著者略歴】
松本圭二(まつもと・けいじ) 詩人。フィルム・アーキヴィスト。
1965-。早稲田大学第一文学部中退。2006年、『アストロノート』(「重力」編集会議)で萩原朔太郎賞受賞。
他の詩集に、『ロング・リリイフ』(七月堂、1992年)、
『詩集』(私家版、1995年)、『詩集・未製本普及版』(アテネ・フランセ文化センター、1996年)、
『詩集工都』(七月堂、2000年)、『詩篇アマータイム』(思潮社、2000年)。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

内島菫

30
詩人の「叶うことならば処女詩集だけを作り続けたい。私は詩人の成熟など全く信じていない」という言葉に、私は私自身の考える「初期作品最高傑作説」のヴァリエーションを見る。タイトルの「ロング・リリイフ」も良い(「少し出番の長い中継ぎ投手」と解釈したから)。創作は閉じこもった成熟ではなく、「一回きりの跳躍」を繰り返す中継ぎなのだ。それは特に言葉の性質でもある。例えば「エレクトリック・フルーツ」が好き。2017/11/23

ドン•マルロー

13
若さゆえの感傷性を焦がすことなく、絶妙な熱量と適切なタイミングで仕上げられた逸品である。もっとも、後半において惰性的な部分があることも否めなかったが。2018/06/03

misui

11
付録の小冊子に投稿時代の初期詩篇が掲載されており、先人を踏まえた現代詩らしい書きぶりに感心してしまった。そしてもうすでにここで台詞的な声やモノローグが導入されていて、詩集本編にいたっては声が声を継ぎ、次々に声を異化しながら、肩を透かしてみせるという作風が確立していく。詩の中で増殖し呼び交わす声に全体としてどのような形を与えてやるかに詩人の苦心の跡を見るように思う。2017/10/30

9
最高にかっこいい2017/12/24

9
まだ夏至の太陽も薄く残っているから 少し青みがかり 水色に滲み出す部屋で/私はどれほど固く目を閉じても 完全な暗闇を身体に呼び込むことができない/手をのばせば 木々に触れることさえできるのに 雫の垂れる指に/高地から高地へと山岸を移動する ディーゼルか何か 赤い機関にひかれてゆく/遠景が残されているのだから/手をのばせば 木々に触れることさえできるのに ふいに頁を捲る音がして/私は重力に引き込まれてゆく (「夏至」)2017/09/08

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