出版社内容情報
泳ぐママカリ 10
シャコとの出合い 17
乙島のシャク 24
メバルの煮つけ 29
アナゴの虜 37
フグのおやじさん 44
ベラタを食べた 52
オコゼの顔立て 58
カキ三昧 67
サワラぬ神に祟りなし 75
ゲタに挑戦 85
ガザミとベカを捕まえた 92
タコが揺れる街 98
貝の仲間とシラウオの指 105
ハエある郷土料理 114
フナ飯を食ってみられぇ 124
トマトは桃太郎 132
黄ニラの立ち話 142
沢田のタケノコ 152
黒豆づくし 161
不思議なカボチャ 172
白桃の値段 178
柿の国 188
米を買わずにパンを買う 202
ばらずし万歳 216
岡山たべある記 225
まえがき
縁があって岡山に住みつくことになった私は、 やたらに食い意地が張っているうえに好奇心丸出しときている。 あれから干支が一回り、 岡山は面白くもおいしい所だとつくづく思っている。
「ばらずし」 というすばらしい米食文化が花開いているのに、 お米をあまり食べない。 どのぐらい食べないかというと、 ■ある県庁所在地で市民一人当たりの米購入量は最低というデータがある。
岡山のおみやげに何が良いかと聞けば 「ママカリ」 と教えてくれる。 しかし、 岡山の人が県外に出る時、 この 「ママカリ」 を自ら持って出るのをほとんど見たことがない。
高級果実の代表 「清水白桃」 に至っては、 「あんなもの地元のもんは食わんけぇ」 と言ってケロッとしている。 「ベラタ」 や 「乙島シャク」 のような他県では食べられない食材でも、 その存在をさえ知らない人が多い。
それでも岡山の食文化が豊かなのは事実であり、 実感でもある。 海や川、 田畑や山に豊かな食材資源が溢れているし、 熱心な生産者を気候的条件や地形的有利さが後押ししている。 風土に見合った数々の料理は訪ねる者の舌を飽きさせない。
私も岡山にご縁があったおかげで口にすることができた食材や料理は数多い。 まあ最初から間口を広げ過ぎてもそれこそ味が拡散してしまうから、 ぼちぼちとつまみ食いすることにしよう。
かつて長崎に赴任していた時、 あの 「卓袱しっぽく料理」 を味わって 「どういう料理かさっぱり分からん」 と感想を述べたら、 それが正解だと言われた。
日本の和、 中国の漢、 オランダの蘭がミックスされて和漢蘭料理→分からん料理になったとの珍説をうけたまわったのだ。 長崎市はお米を買う量が日本一の県庁所在地である。
その長崎のあと、 お米を最も消費しない岡山市にご縁があって生活するようになったのも面白い因縁だと思っている。
ここは一つ、 岡山における 「さっぱり分からん」 をひも解いてみなければならない。
新世紀初頭に