内容説明
戦争地獄から未知の惑星地球へ連行された兵士は何を見たか。戦争地獄と平和地獄。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ニミッツクラス
21
94年(平成6年)の税抜1800円の群像社単行本初版。同社の“ストルガツキイの世界”の一冊で、初出は74年の雑誌掲載。「蟻塚の中のかぶと虫」や映画化された「ストーカー」の著者。本書はFDに残っていた深見氏の草稿(遺稿)を大野・大山氏が校正完訳して脱稿。進んだテクノロジーを有する地球人有力者コルネイらは、戦争に明け暮れる惑星の一種族、通称ファイティング・キャットのガークを瀕死の状態から蘇生回復させる。ガークを和平への礎としたい(思いっきり内政干渉)が、生まれついての戦闘種族は…判り合えない一冊。★★★★☆☆2021/05/21
ヴィオラ
7
個人的には、今ひとつハマらなかったかなぁ…。ディストピアとは、ユートピアとは何か?と、たまに考えるけど、やっぱりそこにいる人間の気の持ちような気がするな(^◇^;) 自分の全てをかけて来た問題・課題が、他の誰かによって短期間で簡単に解決されちゃうっていう状況は、確かに自分の存在が矮小化される感じがして、激しくいたたまれないかもしれない…。2019/06/01
lico
2
戦争を知らないこどもたちならぬ戦争しか知らないこどもたち。戦争に明け暮れる惑星から平和な地球へと誘拐された青年が、世界のギャップについていけずに苦悩する。荒廃した故郷と平和な異国のどちらを選択するのか、全く正反対のガークとダングの掛け合いからは戦後すぐの日本を、さらにいうなら昨今の難民問題が思い起こされた。テクノロジーに取り残された旧式ロボットのドランバと突然の環境の変化についていけないギークとどこか被る。ラストはギークの生きる強い意思を感じられ感動的だが、同時にとてもやるせない気分になる。2016/07/07
スターライト
2
ストーリーは、戦いが続く世界から「救出」された若者が、平和な社会を築いている地球に違和感を感じ…というもの。最後の主人公の希望は『ウロボロス』のラストを思わせて、何とも皮肉な内容となっている(としか書きようがない)。戦争が日常化してしまった社会というのは21世紀の今も不幸にして存在するが、そんな社会に置かれた人はこの主人公のような気持ちを持つのかと思うと、ちょっとやりきれない気もする。短いながらも幸福とは何かなど、いろいろと考えさせられる作品だった。2010/03/17
かがみん
0
戦争という地獄と、ユートピアという地獄を、ある青年兵士の目を通して描くストルガルツキイのSF中編。著者の翻訳では第一人者と言える深見弾の遺稿でもある(実際には下訳を有志が引き継いだ形であるため、厳密な最終訳ではない)。2012/10/02