死に魅入られた人びと―ソ連崩壊と自殺者の記録

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  • サイズ B6判/ページ数 307p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784905821298
  • NDC分類 368.3
  • Cコード C0022

内容説明

ひとりひとりの人生を飲み込んできたソ連という国家の崩壊のあとに、寄る辺なき社会へ放り出された人たち。自らの死を選ばざるをえなかった無名の人たちの肖像だけをじっと見つめ、社会主義国家という歴史から消えた巨大な亡霊といま一度向き合うインタビュー集。

目次

ゲートル、赤い星、夢みていたのは地上の楽園
紺色の夢のなかへ消えていった少年
スターリンもキューバ革命も、ずっと愛してきました
人生はベルイマンというよりフェリーニなんです
最後の世代の共産主義者と赤い理想の魅力について
彼は鳥みたいにとんでいった
残ったのは、二間の長屋、ひと畝の畑と小さな勲章
いいことなんか、なにもなかった
スターリン少女は五〇歳になって精神病院で共産主義と決別しました
せめて母親にだけでも愛されたかった娘
アエロフロートの窓口で航空券を買って行った戦場
他人を撃つよりも自分を撃つほうが楽だと若者はいう
死ぬ前にドラマのつづきが気になった
父はしあわせていることができなかった
ひとりでみんなのために祈りました
羽ばたき一回とシャベルひとふりのあいだ

著者等紹介

アレクシエーヴィチ,スヴェトラーナ[アレクシエーヴィチ,スヴェトラーナ][Алексиевич,Светлана]
1948年、母の故郷ウクライナに生まれ、その後父の故郷ベラルーシに移り住む。国立ベラルーシ大学ジャーナリズム学部を卒業後、地元の新聞社などではたらいたあとジャーナリストとして独立し、1983年執筆の『戦争は女の顔をしていない』から一貫して人びとの心の声や小さな記憶を集めて伝えるドキュメンタリーを発表しつづけている。原発事故に巻き込まれた人びとを取材した『チェルノブイリの祈り』(岩波書店)をはじめ、『アフガン帰還兵の証言』(三浦みどり訳、日本経済新聞社)、『ボタン穴から見た戦争』(三浦みどり訳、群像社)がすでに邦訳され、テレビの対談番組やチェルノブイリ救援団体の招きによる日本各地での講演のために二度来日している。『戦争は女の顔をしていない』はソ連時代にタガンカ劇場などが舞台化し、本書『死に魅入られた人びと』は著者自身のシナリオ化によりモスクワで映画化された。すでに国際的な評価も定着し、毎年世界のすぐれたジャーナリストを対象におくられるユリシーズ賞の選考委員もつとめている

松本妙子[マツモトタエコ]
ロシア語翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

104
その重さに、少しずつしか読み進められなかった。きっかけは何だったか。ペレストロイカ?対イラクへの米ソの共同路線?ベルリンの壁の崩壊は、共産主義からの解放、ソビエトの民主主義か。自由な独立国の成立…、のようにこちらからは見えていたのだ。民族紛争の凄まじさはあるにしても、それは抑えつけられてきたものが飛び出す時の爆発のようなものかと。しかし、それに耐えられないもの達の多かったこと。ソ連の解体は、自らが持ち得た希望の崩壊としか見えず、絶望に取り残された人たちがいた。その絶望感は若者をも飲み込んだのだろうか。2015/10/18

りー

40
共産主義について知識があっても、その中で、思想そのものが命を左右するほどの影響を受けて生きた人々の言葉に僕らはどの程度耳を傾けた事があるだろう。実現可能性を棚上げすれば、僕はフーリエのファランジュやラファティのカミロイ人なんかが好きで、どちらかといえば共産主義寄りな嗜好なので、ただ誰もが幸せになれるという理想を追い求めて生き、その理想を奪われてしまった彼らの絶望を思うとゾッとしてしまう。ここ最近のノーベル文学賞の中では目立たないし絶版本ばかりだけれど、今の日本でこそ読まれて欲しい作家だと思う。2015/10/24

ヘラジカ

34
アレクシエーヴィチの作風は、同じく旧ソ連圏のジャーナリスト、カプシチンスキが言うところの文学的コラージュである。共産主義体制が崩壊した変革の時、理想郷を夢見ていた人々は如何にして死と見つめ合ったか。少年から老人まで老若男女の自殺者(或いは未遂者)とその周囲の声を取り上げ、ソ連崩壊とそれに関連する死の実態を浮かび上がらせようとしている。例によってその声はどれもが壮絶で凄まじい。死を選ぶことが人生で初めて味わう自由であった、という言葉に何を思えば良いのだろうか。2015/09/27

kei

28
先に読んだ『セカンドハンドの時代』(2013年発行)と一部重複しているため内容は頭に残っていましたが、受ける印象はかなり異なります。著者のことば「こわい。そう、私は自分のこの本が怖い。」(P5)とあるように、インタビューされる全員から感じるのは「個人的な恐怖」です。対して『セカンドハンドの時代』は人が生きている国そのものを感じました。読みやすいのは本書です。『セカンドハンドの時代』は複数の人物のインタビューが交錯していてなかなか読み進められなかったです💦2022/04/19

くさてる

28
ソ連崩壊直後の混乱のなか、自ら死を選んだ人々へのインタビュー集。もちろん、亡くなった当人には直接インタビューできないので、対象になっているのは未遂者と周辺の人々。世界の変化がどれだけの人々の人生を崩壊させたのか、読んでいて辛いのはもちろんだけど、それ以上にその肉声の重みに圧倒された。15年前に発行された本なので仕方ないかもしれないがソ連崩壊とその影響、登場する人々の背景にある歴史的事実などの解説もあればより内容を深く理解できた気がした。2020/08/08

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