内容説明
本書で展開されるのは、文学の使用と歴史記述に関する方法を長年検討してきたフランスの研究集団「GRIHL」と、時とテーマごとに構成メンバーをかえて活動している我が国の「文芸事象の歴史研究会」による共同研究の成果である。本書は単なる翻訳論集でも、最新の研究紹介でもない。GRIHLの研究を批判的にとらえながら各人の研究を深化させていった。我が国の若手研究者の軌跡である。
目次
文学の効用―文芸事象の歴史研究序説
第1部 文学の使用法 GRIHL論文選(フランス一九世紀前半の読書経験と社会経験―歴史家による文学の使用法を再考する;文学史と読書の歴史;「時の故郷へ」 ジュール・バルベ・ドールヴィイ;経験という仕事―近世における哲学者の伝記、哲学的生のスタイル、人間の生;書物の中の世界、世界の中の書物 パラテクストを超えて―一七世紀における書籍商の出版允許について;ある国務秘書官のさまざまな歴史―機密顧問会議の作家ロメニ・ド・ブリエンヌ(一六三六‐九八))
第2部 文学と証言(一七世紀における悲惨のエクリチュール―文学と証言;ボシュエ『ルーヴルの四旬節説教』をめぐる解釈の相克;「バロック」概念をめぐって』)
第3部 「書物の歴史」から「書物による歴史」へ(序―世界は書物によって織りなされてゆく;書物による歴史―方法論の提案;シャルル・ド・グリマルディの『メモワール』―フロンドの証言から家門の記念碑へ;文学の真実―社会的想像物、読書体験、文学的知;“詩の危機”は起こらないだろう―一九世紀末「文芸共和国」史)
第4部 文学・証言・生表象(序―文学研究と歴史記述研究の対話のために;農村における政治と文学―レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ;レチフ―啓蒙の「マイナー文学」再考のために;『フランス組曲』―レチフからネミロフスキへ、農村におけるフランス)