内容説明
「アーベントラント」とは何か。20世紀におけるキリスト教系の政治勢力とヨーロッパ統合との関係を、「アーベントラント」運動を軸にして描き出す。
目次
序章(ヨーロッパ統合と近代;「西洋(アーベントラント)」とは何か ほか)
第1章 キリスト教民主主義の国際ネットワークとヨーロッパ統合(1945年以前の国際協調の模索;NEIとジュネーブ・サークル―ヨーロッパの平和と反共と統合のために ほか)
第2章 第一次世界大戦後の「西洋」概念の政治化―雑誌『アーベントラント』とヘルマン・プラッツを中心に(雑誌『アーベントラント』(1925~1930年)
ヘルマン・プラッツの「アーベントラント」思想)
第3章 「アーベントラント」とナチズム(反ヴァイマル共和国派による「アーベントラント」概念の拒否;ナチ体制下の「アーベントラント」概念 ほか)
第4章 第二次世界大戦後のアーベントラント運動(第二次世界大戦後の再出発―雑誌『ノイエス・アーベントラント』;アーベントラント運動の組織化―アーベントラント・アクションとアーベントラント・アカデミー ほか)
著者等紹介
板橋拓己[イタバシタクミ]
成蹊大学法学部教授。1978年栃木県生まれ。2001年北海道大学法学部卒業、08年北海道大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。成蹊大学法学部准教授などを経て2016年4月より現職。専攻は国際政治史、ヨーロッパ政治史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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PETE
4
(1)ハイデガーも一時期愛用していた胡散臭い概念が、無反省なカトリック保守の間に蔓延し、公人が公の場で使った途端に潰される物語。 (2)筆者の言う通り、ヨーロッパ統合を推進していた諸勢力が様々な方向を目指していたことを証す研究として素晴らしいと思う。 (3)現代のイスラモフォビアの勢力がこの概念を使い始めているというのは案の定だった。2023/08/30
佐藤丈宗
4
ヨーロッパ統合という壮大なプロジェクトは、近代が育んできた「国民国家」を超えるものという進歩史観的な視点から評価されることが多い。本書が取り上げるキリスト教保守派の西洋(アーベントラント)運動もまたヨーロッパ統合を掲げたが、その性質は「反民近代」という要素をもっていた。こうしたアーベントラント主義者が果たした役割は大いに歴史の逆説を含む。「ポスト近代」とみなされるヨーロッパ統合と「反近代」的なアーベントラント運動は相反するものではなく、接続可能なものであるという視点は示唆に富む。2016/11/04
剛田剛
3
ヨーロッパの十字路とも言うべきドイツを題材に近代の「欧州」の形成について学ぶことは、欧州が終焉に近づいている現在にあっては特に意義あることだと思う。本書にある通り、それは決して単線の過程ではなかった。 優れた視座を提供してくれる論考だった。2017/10/03




