内容説明
戦後日本において戦争責任意識の欠如と国民意識の欠如とは密接につながっていた。それゆえ戦争論では感情的で、不毛な論争が繰り返され、対立するだけの国家観が語られてきた。本書は、吉本隆明、丸山眞男、火野葦平、大西巨人、大江健三郎、松下圭一など戦後日本を代表する論者の“戦争”と“国家”に関する思考に真正面から切り込み、空転する思想の対立を超え、“戦争”と“国家”を語るための基本的な枠組みを提出する。
目次
戦後思想の初心と挫折―吉本隆明の「戦後」
第1部 「戦争」の語りかた(われらが敵、日本軍―戦後民主主義者の「兵隊」像;兵隊、われらが同胞―火野葦平の「戦争」;兵隊たちの抵抗―大西巨人の「戦争」;軍国少年の夢―大江健三郎の「戦争」)
第2部 「国家」の語りかた(大日本帝国V.S.「村=国家=小宇宙」―大江健三郎の「国家」;国家は共同幻想なのか?―吉本隆明の「国家」;憲法―私たちの基本ルール―松下圭一の「憲法」)
著者等紹介
井崎正敏[イザキマサトシ]
批評家。1947年、東京生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業後、筑摩書房に入社。「ちくま学芸文庫」編集長、「ちくま新書」編集長、専務取締役編集部長などを経て、2001年に退社、批評活動に入る。この間に武蔵大学客員教授、東京大学・明星大学非常勤講師なども務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hasegawa noboru
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表題と副題と表紙の胸まである帯のコピー文、活字ばかりからなる装丁が本の中身を良くまとめている。憲法九条、靖国、終戦をめぐって、左右両派の感情的な不毛の論戦がくり返されるなか、やがて戦争を知る世代が少なくなっていけば、現安倍政権の猛進的な(戦争をする国家にしたい)一連の政策に、違和感なく容認する世代が増えるだろう。「鬼畜米英にようちょうを」も「劣国、中、韓、北朝にあなどられていていいのか」も同じ一つの、変わらない国民的心性だ。〈悲惨な体験と憲法九条を結びつけただけの護憲論は柔弱きわまりない。〉2014/05/06