内容説明
吉本隆明が不死鳥のように読み継がれるのはなぜか?たんなる追悼や自分のことを語るための解説ではない、ステレオタイプの礼賛でもなく、もちろんクサすための批評でもない。読めば新しい世界が開けてくる吉本論、大幅に増補して、待望の復刊。
目次
第1部 「座標」という発想のゆくえ(「マチウ書試論」のモチーフと発想;『言語にとって美とはなにか』のモチーフ;『心的現象論序説』について;「身体・生命・エロス」と神戸事件;「おくれ」の問題について;これから吉本隆明を「読む」ことをめぐって)
第2部 「地図」を求めて(地図がわかるとはどういうことか;『共同幻想論』と『古事記』;「転向論」から『共同幻想論』へ;『ハイ・イメージ論』と世界視線;「支え手」としての共同体)
著者等紹介
村瀬学[ムラセマナブ]
1949年京都生まれ。同志社大学文学部卒業。現在、同志社女子大学生活科学部教授
佐藤幹夫[サトウミキオ]
1953年秋田県生まれ。75年國學院大學文学部卒業。批評誌『飢餓陣営』主宰。現在、更生保護法人「同歩会」評議員、自立支援センター「ふるさとの会」相談室顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yutaro sata
31
『共同幻想論』の対幻想を、ブラザーの問題として考えるところなどが面白い。兄弟分、という立て方で共同体が拡大していく。 また、この本は、地図や座標といった言葉が中心軸になっているのだが、その軸から、吉本さんの仕事を、どう世界を見、異なるものを繋ぎ合わせていくかの試行の過程として捉える、という村瀬さんの理解の仕方があり、その仕方に素直に沿っていくと、分かりやすくなることも多い、と感じた。2023/12/30
マッピー
3
吉本隆明を読み解くための思考や思想を説く本ではなく、どちらかというと、村瀬学の思想を補強するためにうまく吉本隆明を使っているように読めた。興味深かったのは視線の話。「垂直からの世界視線」は身の丈の視線。 「上から見る目」は空間的な高みを表わしているだけではなく、「時間を見渡す目」でもある。1階から2階、2階から3階と、費やされた時間を上から一望できるというイメージで。だから権力者は上から下を見渡したがる。身の丈の視線を忘れず、なおかつ上から見る目を感じ続けること。煽られて自分を見失うことがないように。2016/12/14