内容説明
吉野の森にこもる不思議な感覚、山住みの人間の織りなすさまざまな物語を吉野に在住した戦後を代表する歌人が豊かに描く魅惑の世界。
目次
霜ふる山
鷹
沈められた熊
燃える岩
夢ちがえ
霧のなかの羚羊
蟇
虹
さゆりの花は人死なしめむ
虻と夕立〔ほか〕
著者等紹介
前登志夫[マエトシオ]
1926~2008。奈良県吉野郡下市町に生まれる。戦後まもなく詩作を始め、1956年に詩集『宇宙驛』(昭森社)を刊行するが、前川佐美雄に師事し短歌を志す。1978年『縄文紀』(白玉書房)により第12回迢空賞を受賞。その後1988年『樹下集』(小沢書店)で第3回詩歌文学館賞、1992年『鳥獣蟲魚』(同)で第4回斎藤茂吉短歌文学賞、2003年『流轉』(砂子屋書房)で第26回現代短歌大賞、2004年『鳥總立』(同)で第46回毎日芸術賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶんこ
43
吉野の山で暮らす人々、特に山男と言うべき人々の様子がよくわかるエッセイ?でした。伐採した木々を麓に降ろす神業ともいうべき技量。無口で純朴な山男に嫁いだ妻が夫・子を置いて出奔した話も何件か出てきて、思わず同じ人の事かと迷うくらい似ているのは、閉ざされた山奥には珍しいことではなかったのか。文章が美しく淡々としているので、読んでいると自分も吉野の山奥に居るような気分になったりしました。2016/12/11
Shoji
42
奈良の吉野の山村に住む著者と周りの人々の生活や習俗について綴られたエッセイです。私自身、奈良の吉野に住んでいる関係で、親しく興味深く読むことができました。素朴な生活、素朴な日常に違いありませんが、そこには優しさと力強さが感じられました。また、行間に吉野の民俗を垣間見ることができました。不便な暮らしもまたいいもんだ。2020/08/19
鯖
16
吉野に棲まう歌人の、山に棲む人々を描いたエッセイ。今年は吉野に二回行くことができました。真冬で特急電車に私たちしか乗っていなかったときと、観光客で満員の、まさに吉野桜が満開の春と。少し奥にはいればむきだしの山が残っている吉野の、森の空気や匂いやそんなものを思い出しながら読み返しました。また吉野に行きたくなりました。2014/12/26
fu-min
6
素晴らしい日本の森の四季、この一瞬を残して下さった横田さんに感謝。2017/06/11
るなたん
2
夏になると無性に読みたくなる不思議な感覚になる本。異界の山奥に放り出された気持ちになった。淡々とじっとりとぞくぞくと。折々の和歌はいにしえの人の営みへと誘ってくれる。人々の暮らしは続き続いていくのだな。民俗学のもの深さ、魅力を体感できた。どうも吉野は不思議な感覚になる土地のようだ。2024/07/25