内容説明
チベットで長く愛されてきたむかしばなし。しかばねと旅する主人公に課されたのは、しかばねが語るお話がどんなにおもしろくても、口をきいてはいけないということ…。チベットの人々に長く愛されてきたむかしばなし『しかばねの物語』を、親しみやすい日本語訳とさし絵で味わえる一冊です。
著者等紹介
星泉[ホシイズミ]
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授。専門はチベット語、チベット文学。研究のかたわらチベットの文学や映画を紹介する活動も行っている。チベットの民話収集にいち早く取り組んだ研究者である星実千代を母にもち、幼い頃からチベットの昔話に親しんできた
蔵西[クラニシ]
漫画家、イラストレーター。チベットの少年僧を描いた『月と金のシャングリラ』(イースト・プレス)が第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品となる。またチベット関連書籍の挿絵や装画を多く手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
76
児童書。昔話。竜樹大師(りゅうじゅだいし)の所まで墓場のしかばねを運ぶことになったデチュー・サンボ。しかばねを背負っている間は喋ってはいけない。しかばねは、返事をしたくなるような飛び切り面白い話を語って聞かせる▽空飛ぶ木の鳥/テンセル/こがね姫としろがね姫/金もちのどろぼう/羽衣王子/まずしい男と竜王の娘/カエルとお姫さま/動物のことばがわかる少年/石の獅子/恋人の心臓/占い師の息子と三人の美しい娘▽入れ子形式の物語(枠物語)が12話。あとがき解説も丁寧。イラスト挿画もいい。良本。2023年9月刊2023/11/08
おはなし会 芽ぶっく
13
昔ばなしにはツッコミどころ満載なことが多く、それがあってこその昔ばなしだけれど、更に上をいくツッコミどころ(笑)墓場の屍を運ぶ…その屍が腰から下が黄金、腰から上はトルコ石とかって、ツッコミどころでしょ! 『 旅のはじまり / 空飛ぶ木の鳥 / テンセル / こがね姫としろがね姫 / 動物たちの恩返し / 金もちのどろぼう / 羽衣王子 / まずしい男と竜王の娘 / カエルとお姫さま / 動物のことばがわかる少年 / 石の獅子 / 恋人の心臓 / 占い師の息子と三人の美しい娘 』2023/11/10
BECHA☆
10
ひょんなことから大罪を犯してしまった青年が、洞窟の大師から罪滅ぼしとして「しかばね」を取ってくる行を与えられる。しかばねは難なく手に入れられ、連れ帰る途中でしかばねが語る話は底本24話から12話を選んで翻訳されている。どの話も楽しくちょっと突っ込みたくなったり謎が残ったりと良い塩梅で、残りの12話も読んてみたくなった。2023/11/26
くるり(なかむらくりこ)
7
「しかばね」って「屍」?と読む前からつっこみたい気持ちでいっぱいだったけど、読んでみるとまさにつっこみどころ満載。「腰から下が黄金、腰から上はトルコ石……頭にはほら貝のまげ」の屍とな。しかも主人公がだめと言われてもつっこむし、訳者あとがきでもつっこみが推奨されています。どこかで聞き知っているような、普遍性を感じる物語もあるけれど、そこここに差し挟まれる諺や慣用句の味わい、それが多用される形式そのものも、本当におもしろい。最後はどうなるかと思いきや、最後の最後までつっこませてくれました。それでいいんかい!!2023/11/07
timeturner
7
毎回びゅーんと墓場に戻ってしまうしかばねが面白かわいくて、次はどんなお話かと愉しみに読んだ。デチュー・サンボ、途中からはもっとお話が聞きたくてわざと口きいてたんじゃないの? どこの国でも人間の本質は変わらない。為政者は横暴で残虐だし、金持ちは強欲で平気で人を騙す。そういう現実に苦しめられてきた庶民は、知恵と勇気で苦境を乗り切り悪人を懲らしめる話を語り聞くことで、元気を出してきたんだろうな。2023/10/15