内容説明
ある日突然、人が死ぬ。自然死でも病死でもなく、暗殺によって。事件性のない死として処理されるよう、設計者が綿密に計画を練り、暗殺者が実行するのだ。32年前、修道院のゴミ箱に捨てられた赤ん坊は、暗殺組織に引き取られ、やがて一流の暗殺者となる。人を殺し、殺され続けた果てに、彼が見たものとは…。さまざまな矛盾を孕むことでしか生きられない人間存在の哀しみを描いた、韓国エンターテインメント小説の最高傑作。
著者等紹介
キムオンス[キムオンス]
金彦洙。1972年釜山生まれ。慶煕大学校国文科を卒業して同大学院を修了。2002年、晋州新聞秋の文芸に「断髪長ストリート」と「本気に気軽に習う作文教室」が当選。2003年、東亜日報新春文芸に中編「フライデーと決別する」当選。2006年、長編小説「キャビネット」で文学ドンネ小説賞受賞
オスンヨン[オスンヨン]
韓国生まれ。2007年、東京学芸大学連合大学院で博士号取得(日本近・現代文学専攻)。神田外語大学、東京学芸大学非常勤講師を経て、相模女子大学非常勤講師、新大久保語学院池袋校校長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アマニョッキ
48
初韓国ノワール。とてもよく人間が描かれていると思う。乾いた文章が血生臭さを和らげており、多くを書かないことで逆にどんどん頭のなかに映像がひろがってゆく。視覚優位のわたしにとっては、まるで素晴らしい長編映画を見せてもらったような満足感。韓国文学は素晴らしい翻訳家の方がたくさんいらっしゃることも強みだと思う。2020/07/29
ヘジン
7
暗殺者の本拠地は図書館。武器はなぜかヘンケルス(私も愛用)。この世は「設計者」の設計どおりに回ってるわけじゃない。話が長くて展開が遅いし、ノワールだけどバイオレンスもぬるい。もっとギュッと圧縮できそうだけど、このゆるい感じが作者の持ち味なのか? 韓国の値段の安い理容室は客が自分で洗面台でシャンプーするんだね。ドライヤーで乾かすのも、スタッフがするところと自分でするところがあるとか。2022/08/01
有無(ari-nashi)
6
設計者が計画を立て、それに従い標的を殺す暗殺者たちの話。誰にも気付かれたり疑われたりせずに殺されていく標的と暗殺者。時代の流れにより揺れる暗殺業界。近づく大統領選挙。世界を変えようとするモンスター。白猫でも黒猫でもやることは同じ。自分自身すら本当の理由が分からなくなりながら生きていく。結局何も変わらないと思っても戦うことの意味。逃げるのにも勇気は必要。本の分厚さが気にならない面白さだった。2015/02/16
カタコッタ
6
数年に1度くらい何気なく選んだ本が忘れられない本になったことがある。この本も私にとってその類の本となることだろう。読んでいる間、長い映画を見ているようであり、叙事詩を読んでいるようであった。後半は冷徹なハードボイルドである。作者あとがきは、そのままエピローグのようである。全体に漂うすがすがしい空気感は著者の力のみならず、翻訳者の力によるものも大きいと思う。韓国の現代文学恐るべし。ぜひ、いろんな世代の方に読んでいただきたいと思う。2013/07/17
ろくたろう
4
なんというかすごい本だった。映画を観た気分。ノワールというジャンルの特徴なのかもしれないが、全体に漂うドライな雰囲気は、韓国らしさと言えるのかもしれない。言い訳も体裁も内省も逡巡もない感じ。ストーリーテラーとしても秀逸で、日本でこれだけのものを書ける人はなかなかいないのでは、と思った。2022/10/19