目次
初期作品
太平洋戦争
カントリー・ドクター
イギリス
スペインの村
助産師モード
化学の君臨
季節農場労働
慈悲の人
ピッツバーグ〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
242
「写真はせいぜい小さな声に過ぎないが、ときたま、ほんのときたま、一枚の写真、あるいは、ひと組の写真がわれわれの意識を呼び覚ますことができる。私は写真を信じる。もし充分に熟成されていれば、写真はときには物を言う。それが私、そしてアイリーンが水俣で写真をとる理由である」人間を写し取り、その人生や、取り巻く社会環境まであぶり出す、物言う写真。1971年回顧展のタイトル「Let Truth Be The Prejudice」(私たちが持つ先入観が真実と等しくなりますように)という公平さと正直さが伝わる写真。2022/10/23
ぺったらぺたら子
17
何故か頭の中に流れたのは町田町蔵の名曲『麦ライス、湯』であった。ヒューマンなのである。「麦や葡萄が栽培されている。しかし同時に不義な事、無道な事、非道な事、悪辣な事、恐ろしい事、そのような事が日々行われている」。人の中にある聖性、一瞬の表情にひそむ永遠、そして巨大な悪の銀色と黒の底なしのだんだら地獄。スタインベックにも通じる。水俣で共に戦った著者と妻の写真が何故か私にはジョン&ヨーコに見えた。有名な表紙の写真のように、我々の日常は神話的世界なのかもしれない。2018/04/29
遠い日
12
一瞬を切り取った写真の真実。そして、真実の写真。苦しみ、煩悶、満足、放心、さまざまな表情の中に、人種を超え、場所を超え、時間を超えた「核」があった。2018/05/27
アヴォカド
11
表紙の『楽園への歩み』はとても有名だが、ちょっと絵画的過ぎるかなあと私はあまり好きではなかった。『水俣』など知っている作品も多いが、今回は『カントリー・ドクター』『助産師モード』のシリーズがいいと思った。人のこんな表情、こんな背景、こんなシーンをよくぞ捉えるなあ、くっきりと掘り出すなあ。2018/05/02
kamakama
9
表紙の写真(タイトル『楽園への歩み』)に魅かれて読みました。写されている二人の子どもは、スミス氏が最初の結婚で得た二人のお子さん達との事。ユージン・スミスというと我々日本人はどうしても「水俣」を思い浮かべるけれど、それは彼の業績の一部(もちろんとても偉大な一部ですが)に過ぎないのだという事がよくわかりました。彼が撮った人々の眼差しがすばらしい。彼らの言葉にならない叫びが写真の中から聞こえてくるようです。彼らの苦しみ、悲しみ、怒りが直接胸を打つのです。何度見ても心が震えます。すばらしい写真集です。2022/11/27