内容説明
ぼくの下は海。ぼくの上は空。曳いてきては、曳いていき、曳いてきては、曳いていく。「ぼく」はタグボート。ぼくのしごとは、港にはいってくる大型船を停泊させること。いつかぼくも、はるか遠くの海へ行ってみたいけれど…。ノーベル文学賞詩人ヨシフ・ブロツキーが子どもたちのために書いた、ちいさなタグボートの美しいものがたり。2018年国際アンデルセン賞画家賞。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶち
110
"ぼくの下は海。ぼくの上は空。曳いてきては、曳いていき、曳いてきては、曳いていく。ぼくはタグボート。ぼくのしごとは、港にはいってくる大型船を停泊させること。いつかぼくも、はるか遠くの海へ行ってみたいけれど..." 旧ソ連出身のノーベル文学賞詩人が若い時に書いた作品を、その没後に国際アンデルセン賞画家賞を受賞したイーゴリ・オレイニコフが絵本として再生させた素晴らしい絵本です。詩が新たな命を吹き込まれたようで、幻想的でいてイキイキともして、気品をも感じるページばかりです。訳された日本語も美しいです。2020/10/21
どんぐり
88
ノーベル文学賞を受賞した亡命詩人ブロツキーが1962年旧ソ連時代に発表した「ちいさなタグボートのバラード」の詩と国際アンデルセン賞受賞画家イーゴリ・オレイニコフの絵の組み合わせによる絵本。港町レニングラード(現在のサンクト・ペテルブルグ)で故郷と異郷をつなぐ「仲介者」タグボートを語り手とした物語。「ぼくはここに残らなくちゃならない。ほかの船がぼくを必要としているから」とタグボートが大型船を曳いてきては、曳いていき、曳いてきては、曳いていく。港は外の世界に広がる。2022/06/08
nobi
76
そこは港町レニングラードとネヴァ川。オレイニコフの絵はドローンからのように自在に視点を変える。クレーン操縦室から、大型船の舳先を見上げて、カモメと飛びながら、海中の亀と共に…。もちろんタグボートが中心。ちいさくとも気後れせず片意地も張らずに楽しくはたらいている姿が温かいタッチで描かれている。この絵本で詩を書いているのがブロツキーと知らなければ絵の印象が大半となってしまったかも。詩というよりタグボートが語り、それ以外の映像表現が思い浮かばないほどに絵が語る。その温かい語り口のまま思いがけないラストの切なさ。2020/11/18
アキ
72
ノーベル文学賞の詩人ヨシフ・ブロツキーがレニングラードにいた22歳の頃の詩に、2018年国際アンデルセン賞(画家賞)受賞したイーゴリ・オレイニコフが絵を描き、絵本として2011年発行した。2019年邦訳。小さなタグボートは遠い異国から来た大型船をあっちこっちへ曳いては曳き休みなく働くが、その後いとしい大型船との別れが待っている。どれ程悲しくてもここに残らなくちゃいけない。年を取り波止場から離れることがあれば、最後にすばらしい夢の世界へむかおう。異郷への憧れの詩。そして彼も後にアメリカへ亡命する。夢の国へ。2020/01/12
たま
54
ブロツキーがノーベル文学賞受賞を知らされたときたまたまル・カレが居合わせた。内向的なブロツキーが打ちのめされる様子を世慣れたル・カレは『地下道の鳩』でユーモラスに描写している。ブロツキー自身は追放されるように亡命したそうだが、彼の絵本『ちいさなタグボートのバラード』はネヴァ川の港湾で働くタグボートに異国への憧れを託す。オレイニコフの絵は港の風景もダイナミックでいいが、タグボートの乗組員たちもいい。タグボートが役目を終えて海に押し出されるとき、年老いた彼らが埠頭に並んで見送るのである。ちょっとじんとなった。2022/08/03
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