内容説明
16歳のリー・ドリーは、幼い二人の弟と精神を病んだ母を抱え、その日暮らしをなんとか一人で支える日々。ある日、覚醒剤密造で逮捕された父親が、自宅を保釈金の担保に入れ失踪。もし次の裁判に出廷しなければ家を没収されるという。生死さえわからない父親を捜さねばならない。父の足跡を追いオザーク山地の冬の荒野をさまよいながら、リーは自分たちドリー一族の秘められた深層を知ることになる。
著者等紹介
ウッドレル,ダニエル[ウッドレル,ダニエル][Woodrell,Daniel]
ミズーリ州オザーク地方生まれ。17歳になった週に学校を離れ海兵隊に入隊。27歳でカンザス大学卒業後、アイオワ大学創作科に学び文学修士取得。卒業後、将来性ある文学者の卵を支援するテキサス大学ミッチェナー・センターから1年間の奨学金を取得。『Tomato Red』が99年にペン・ウエスト賞を受賞。現在アーカンソー州に近いオザーク地方で妻と暮らしている
黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957年生まれ。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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pepin
17
ヒルビリーの少女リーの物語。オザーク地方の厳しい自然描写が痛々しく、美しい。最後の湖の場面さえも。賢く強いリーが何度も自分に言い聞かせる、あたしは気が変にはならない!という言葉が胸に迫る。巻末のヒルビリーについての解説が素晴らしい。スコットランド移民としての歴史、南北戦争での役割、現代まで続く貧困問題。貧しさから抜け出す為には軍に志願するしかなく、作者もそのルートで小説家になったとの事。関連書の『ヒルビリー・エレジー』を読んでみよう。2022/09/15
M H
15
映画版が素晴らしかったので原作も読了、どちらもオススメ。行方不明になった父親の行方を捜すシンプルな物語。背後にはヒルビリーを取り巻く苛烈な自然、素朴というにはあまりにも暴力に彩られた人間関係、法規範と隔絶したルールが横たわっている。ヒルビリーのメンタリティーや生活は「ヒルビリー・エレジー」が補完になるか。「ウィンターズ・ボーン」には微かな希望も描かれる。それでも心を覆うのは再生産される孤独感、絶望感の深さ。決して愉快な体験ではないが、圧倒された。2017/11/27
秋 眉雄
14
『水はリーが結婚指輪に選びたい宝石の色をしていた。』ヒルビリー。移民達の国。アメリカ自体は若い国ですが、とんでもなく古いものを内包している国だとあらためて思わされました。この物語は映画になっていて(とても良い映画です)、かなりの部分で補完しあっていると思うので、この本を読んだ方は映画を、映画を観た方はこの本を是非とも手にとって触れてみてほしいです。『ヒルビリー・エレジー』を購入。2017/04/05
ゑこびす
3
舞台となった土地の地理的状況、歴史的背景やその文化についての予備知識を持たずに読了後、巻末の訳者あとがきや解説でそれらのことを知り、一気に理解が深まった。後書きなんて大抵はロクなもんじゃないのだが、本作に限っては先に読んでおいたほうがいいのかな。ややネタバレもあるが、そこは注意を促してくれているので読まない方向で。それだけ特殊な地域の特殊な人達の物語なんだな。2012/01/17
Schunag
3
尺が短いのはすべてが凝縮されているからなのだ。足りないものなど何もない。おそろしくパワフル。おそろしく荒々しくて、おそろしく詩的。『ねじれた文字、ねじれた路』や『ラスト・チャイルド』などを好む読者は絶対読んだほうがいいです。個人的にはこの種の小説のなかで本書がベストに近いと思う。2011/11/04