内容説明
一九四二年、戦争と飢饉に襲われ、政府に見放された中国内陸部・河南省の三〇〇〇万の民。大量の餓死者を出し絶望の淵にあった彼らを救ったのは祖国ではなかった。長年タブー視された極限状況の人たちの史実を、中国で大きな反響を呼んだルポルタージュ小説と映画版の2部構成で映し出す。
目次
ルポルタージュ小説
映画版
著者等紹介
劉震雲[リュウチェンユン]
作家、中国人民大学文学院教授。1958年、河南省延津県に生まれ、1973年から78年まで人民解放軍の兵役に就き、78年から82年まで北京大学中文系に学び、82年から文学作品を発表。『一句頂万句』は2011年に中国最高の茅盾文学賞を受賞するなど、数多く表彰。『温故一九四二』は2012年に中国最大のポータルサイト「新浪」で良書ベストテンに入選し、また映画版はイラン国際映画祭脚本賞など数多く受賞
劉燕子[リュウイェンツ]
作家、現代中国文学者。北京で生まれ、湖南省長沙で育つ。大学で教鞭をとりつつ、日本語と中国語のバイリンガルで著述・翻訳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
13
1942-43年中国河南省では旱魃と蝗害で大飢饉に見舞われたが、重慶政府の食糧徴発は続き約300万人が餓死し、多くの難民が発生した。この危機的状況を日本軍が軍糧を放出し救済した。本書は中国ではタブーのこの史実に基づいたルポルタージュ小説「温故一九四二」と、その映画版(シナリオ)で構成されている。中国がこの作品の映画化を認めた意図、又日本軍が中国難民を救済した裏の意図等もあるが、そこに焦点を当てるよりもこの作品から感じられる"人間の尊厳とは何か"に目を向けたい。この映画是非日本での上映を願う。 2016/06/11
Lila Eule
10
内容は、旱魃、蝗害、飢饉、逃散の中で離散した地主一族の人生だが、暴かれるのは、為政者・宗教家・支援国の腐敗と偽善。翻弄される人民の朴訥が哀しい。ワイルド・スワンを思い出すが、この本は1993年に天安門事件の悪評を打開せんと緩めた時期に間隙をぬって登場し、以後の愛国主義反日期に埋もれ、2012年にシナリオを統制されて映画化されたと。著者の責任感がなせる本。こなれた翻訳も見事。天災が人災となり、命と尊厳を蝕む国が現存する事実はやりきれない。厳しい情勢下で意図を潜ませた秀逸な本であることを訳者に教わった。2016/08/13
Kazuhiro Sorimachi
1
1942年の河南省の大飢饉で当時の国民党政府(蒋介石)はなにもせず300万の死者を出した。難民たちに軍の食料を放出して救ったのは意外にも侵略者の日本軍だった―という話。とはいっても手放しの美談ではなく日本軍は中国人を味方につける策略があったためでしかない(でも見収奪の対象としてしか見てない中国政府よりましだった)。この本はちょっと変わった作りで100ページほどのルポルタージュ小説と映画シナリオの2部構成。映画は2012年に完成しているが日本未公開。主人公一家がほぼ全滅していく映画版シナリオが壮絶。2016/06/04
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