内容説明
日本とフランス、文学と社会、歴史と責任…六編の講演録が相互に照応し、ゆるやかに共振を始める―「越境する知識人」が“人生の余白”に語る、後世へ向けたマージナル・ノート。
目次
図書館の裏表―バベル~パリ~草加
詩と散文をめぐって
文学研究者の方法―プルーストとサルトルをめぐって
フランス文学者の見た在日の問題
在日の問題と日本社会
サルトルと現代―来日五〇周年にあたって
著者等紹介
鈴木道彦[スズキミチヒコ]
1929年東京生まれ。1953年東京大学文学部卒業。フランス文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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Yukiko
9
鈴木道彦が金嬉老裁判の弁護団で積極的な役割を果たした後に、プルーストの翻訳に沈潜した背景が、私はこれまでよくわからなかったのだけれど、鈴木は「失われた時を求めて」をアンガージュマン文学だという。「自分が独自な存在であることを、どこまでも問いつめていけば、それが同時にわれわれのおかれた状況の普遍的な理解を進めるはずだ」という意味で、プルーストの小説はアンガージュマン文学だという。なるほどと思った。彼の中では、プルーストの翻訳もアンガージュマンだったのか。2022/07/21
文狸
2
講演に通底するテーマはサルトルの「世界内存在」「独自的普遍」であるが、「普遍的なものと独自的なものとのあいだの緊張」というのはエスノグラフィーにも通じる問題で、非常におもしろく読んだ。それから、一個の独自の存在であることと(逃れ難く)民族の一員であることという両義性から在日の問題を説いていくのだが、それはまた別の「自由意志と責任」という伝統的な哲学的課題を想起させ、これらがこう繋がるのかという明晰さに感動を覚えた。文芸批評というあまり明るくない入り口から、自分の頭の中の種々の問題系に接続されていく感覚。2020/09/02
ishii.mg
1
齢九十に近い著者の近年の講演録。人生の余白にあたってもなお言い続けるべきことはたくさんあり「体制順応主義のはびこるこの国では容易に人びとの同意が得られないことは十分承知のうえで」言い続ける著者に同意する。全く未読のサルトル、いつか読むリストに加えよう。本職はいわば地道なフランス文学研究者だけれど社会へのコミット(アンガージュマン)する知識人としてアルジェリア支援、在日支援様々な活躍をした人。その原点は師渡辺一夫との邂逅であり、パリ国立図書館に通い詰めた文学研究にあったのだろう。本人は知らず幸せな人生だ。2019/12/08
葛
0
著者:鈴木道彦 2018年2月28日初版第1刷印刷 2018年3月10日初版第1刷発行 発行者:德宮峻 発行所:株式会社閏月社 造本:李舟行2019/07/04
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