内容説明
内気な、漫画家志望の少年が、14歳で伝統芸能の人形浄瑠璃「文楽」に入門。長い、長い修業の日々を通して、“一人前の人形遣い”に成長するまで―いまに受け継がれる日本人の仕事の流儀。
目次
第1章 僕は文楽高校に進学した!(三人遣いは究極のチームワーク―日本人に最適なマニュアルとは?;『商売往来』にない仕事―若いうちに限界までやってみること ほか)
第2章 人生の転機・日々の心掛け(一日に一字学べば…―手を使って何かすることの大事;国立劇場と三島さんのカンカンカン―最晩年の三島由紀夫さんとの不思議な縁 ほか)
第3章 仕事をもっと好きになる(人形遣いのトレーニング―つねに“不安”だから努力する;芸の力・見る力―理屈を超えたところの面白さ ほか)
第4章 人形で広がる世界(つらい修業を支えるもの―最初から何でもできる人はいない;みんなしんどい―人の間で仕事する ほか)
著者等紹介
桐竹勘十郎[キリタケカンジュウロウ]
1953年、大阪市生まれ。人形浄瑠璃「文楽」人形遣い。紫綬褒章、日本芸術院賞、毎日芸術賞はじめ受賞歴多数。国立文楽劇場、国立劇場での定期公演のほか、NHKEテレ『にほんごであそぼ』に出演、海外公演含め、国内外で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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ベルるるる
27
師匠にお風呂を沸かすために呼ばれて駆けつける中学生の勘十郎さん。別の師匠に看板の字を読むように言われて、「どこでも勉強はできるなあ」と言われた日。そんな駆け出し時代の話はどれも興味深い。そして本の中の沢山のイラストがまるでプロのようで驚いた。人形の丸胴を作られた事もあるようで、本当に器用な方です。2020年の東京五輪の聖火リレーをお人形さんでしたいと書かれていたけど、私も大阪の町を走るお人形さんが見たいです!!2018/05/27
tom
18
文楽はこまめに見に行っている。そして、人形遣い桐竹勘十郎が見せる人形の姿は、私にとっては、見るたびに「良いなあ」と納得するもの。その彼の聞き書き。彼はほとんど私と同じ年齢。でも、彼は、さらなる高みを目指している。文楽をやっている人たちは、どうも60歳を超えてからが勝負らしい。こんな芸をというイメージがあるからできることだとは思うのだけど、私自身との格差に少々唖然。さあ、4月にはまた新しい公演があります。楽しみだなあ。2018/02/26
びぃごろ
17
14歳から50年間、人形と共に歩んできた勘十郎さんのこれまで。不貞腐れうまくいかないとき、通り過ぎてきたものには「もうちょっとやで」と分かるが、苦しんでいる本人はゴールが見えず、辞めてしまいたい気持ちがよぎる―芸の道に限らず誰にでも当てはまるなぁとしみじみ。勘十郎さんの漫画家志望は伊達じゃない、イラストもさることながら夏祭浪花鑑の団七の丸胴を作り、日本画の絵具で刺青まで入れて仕上げたと。色付けはやり直しがきかないと思うのだが…スゴイなぁ。玉藻前曦袂の7人形の早替わり、見たかったー!2017/03/23
えりまき
14
2022(275)人形遣いの桐竹勘十郎さんのお話。イラストもたくさん。「人形遣いの命ともいえる指の感覚は、敏感さを維持できるよう努めている。私はいわゆる”猫指”で、熱いものに直に触れない。」。長財布やシャワーヘッドを使って訓練されているのだそう。「遊びたい時間を何に使うかで、その人がゆくゆくどうなって行くかが変わる。地道だが、一つ一つの行いがいずれ大きく変わっていく。」。最初の、(チョンチョン)、トォーザイ、このところの〇〇段、相つとめまする太夫、△△太夫、三味線〇〇・・・の口上が大好きです。 2022/10/30
trazom
9
五十年の芸歴の節目の一冊。簑助師匠に対する尊敬に満ちた書きぶりなどを読むと、この人の謙虚で誠実な人柄でが偲ばれる。小中学校の出来が悪く、勉強が嫌いだったから文楽の世界に入ったと正直に話しておられるのにも好感を覚える。確かに、漫画家になりたいと思われただけあって、本の中に紹介されている勘十郎さんのイラストは、大変魅力的である。基本的に、黙々と物事に打ち込む人だということが、その繊細なイラストからも、また、勘十郎さんの遣われるお人形からも、よくわかる。この爽快な読後感は、勘十郎さんのお人柄のなせる技であろう。2017/04/01