内容説明
顔にあざのある女性たちはどのような苦しみを抱え、どのようにその只中を生きているのか!?彼女たちによって語られたライフストーリー=「問題経験の語り」に目を向け、その存在や苦しみを可視化し、「問題経験」の軽減の方途も探ろうとする、精緻な研究の成果。
目次
序章 顔にあざのある女性たちの苦しみを可視化する―「問題経験の語り」の社会学に向けて
第1章 異形がもたらす心理的・社会的困難―先行研究の検討
第2章 問題経験を聞き取る―ライフストーリー研究の方法論的視座
第3章 隠して生きるのはつらい―Aさんのライフストーリー
第4章 内面も人より劣っているのではないか―Bさんのライフストーリー
第5章 普通じゃないっていう意識は死ぬまで変わらない―Cさんのライフストーリー
第6章 異形を生きる―問題経験と対処法
第7章 異形は美醜の問題なのか―インタビュー調査過程の検討
終章 問題経験を軽減するために―社会的認知と対面的相互行為に注目して
著者等紹介
西倉実季[ニシクラミキ]
1976年山形県生まれ。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。現在、東京大学大学院経済学研究科特任研究員。専門は、社会学、ライフストーリー研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gecko
7
顔にあざのある女性たちの経験をライフストーリー研究法を通じて描き出す。カムフラージュメイクによってあざを隠して生活することで「親密な人間関係」を失う葛藤、「あざがある自分」に対する社会の「慣れ」を要求するクレイム申し立て、時間的推移により「顔に対する比重」が低下しても他者との対面状況で日々生じる揺らぎ。顔のあざを〈美醜〉/ジェンダーの問題と捉えていた著者の構えが、「問題経験の語り」を聞き取る中で、〈普通でない顔〉であることの苦悩へと修正されていく過程が興味深い。博士論文をもとにした一冊。 2009年発行。2022/09/27
燈子
0
読んでからこれが博士論文を元にした本であったと気付く…そりゃ読み応えがあるはずだ。当事者による語りと同じくらいの紙幅を取られた先行研究の整理、ライフストーリーという手法についての部分は導入部なのだろうけど普段知らない分野でとても面白かった。インタビューと聞き手のやりとりの、ほんの少しでも掛け違えては相手を傷付けたりする繊細さ。当事者が語るってそんな簡単なことでは無いんだ。そして「美醜以前に普通/普通でない」という強烈な当事者の認識へと辿り着くまでの生々しい試行錯誤。2021/02/26