内容説明
九鬼が死んだ。周囲にはその死を乗り越えられない人々がいた。死に疎遠だった彼らを互いに親密にさせていくが…。生きることの答えは見つけられるのか!?この作品に登場する九鬼は師と仰ぐ芥川龍之介を、篇理は堀辰雄自身をモデルにしたと言われている。他「美しい村」収録。
著者等紹介
堀辰雄[ホリタツオ]
1904‐1953。東京都出身。高校在学中に室生犀星や芥川龍之介と知り合い、東京大学在学中にはプロレタリア文学の影響を受ける。結核を患い、同病の婚約者とともに二人で八ヶ岳山麓の富士見高原にある療養所に入院した体験をもとに著した「風立ちぬ」や「大和路・信濃路」などの作品がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いりあ
17
堀辰雄が、1930年に発表した"聖家族"と1933年に発表した"美しい村"を収録。堀辰雄の作品は自伝的要素が強すぎる気もするので、非常に美しい描写、細かい心理描写で多くの人に読んで欲しいのだけど、受け付けない人も多いだろうなと思います。"聖家族"は、芥川龍之介の死が契機となって描かれた作品で、作者自身がどうやって乗り越えていこうか模索しながら書かれたのではないでしょうか。"美しい村"は、堀辰雄作品の王道です。軽井沢を舞台に、主人公の思ったことや感じたことが描かれます。2014/12/31
マッピー
16
芥川をモデルとした九鬼の死後、その死を乗りこえるために徐々に距離を縮めていく堀をモデルにした篇理(へんり)と、九鬼と恋愛関係にあった細木夫人。堀辰雄の文章ってすごくストレートで的確で、余計な装飾などはないので、気持ちよく読み進めているのに何を読まさているのか途方に暮れることがある。というか、ストーリー以上のものを私は受け取れなかった。名前は変えてあるものの、実際の生活をこれほど赤裸々に描いているのに、文章がとてもフラットなことに驚く。日記じゃないんだよね。小説なんだよね。純文学難しいねえ。2023/10/29
シグマ
13
ラディゲに影響されて、芥川の自殺によって、筆をとったと聞いたことがあったので。予備知識なしだとあの人はなんで死んだの?のままですね…。登場人物の心の動きは少し記号っぽくて物足りないような。2014/02/26
茶瓶
2
淡々と心象風景がえがかれ、人との関わりは最低限におさえられている。個人の心は個人のもので、他者には理解できない事が前提のようになっている。例え母子でも、男女でも、迂闊に相手の心に入っていく事はできない。そこに、深い孤独を感じた。そして自分自身の心ですら捉えられないあやうさ。心が噴き出した時には、美しい村からそれまでの美しさが消える。そしてまた、その儚い美しさを守るために心は閉ざされる。どうしてこんなにまで、個に閉じこもるしかなくなってしまったのか。作者は何を守ろうとしているのだろうか…2017/05/19
warimachi
2
まさかのSDP文庫。まさかの堀辰雄。描写は確かに美しいのだけれど、ぶっちゃけ主人公が気持ち悪い(超暴言)2011/07/22