内容説明
名作「羅生門」を、明治以降の西洋文物移入にかかわる膨大な言説群の中から捉え返し、維新政府批判の書として位置づける、芥川解読の新地平第2弾。
目次
第1部 所々丹塗の剥げた大きな圓柱に蟋蟀が一匹とまつてゐる(柳川隆之介「羅生門」と明治期の「蟋蟀」言説;明治期の文学にあらわれる「蟋蟀」;芥川以前の「羅生門」―「渡辺綱」から「マクベス」まで)
第2部 そこで洛中のさびれ方は一通りではない(「羅生門」の胚胎と明治期の「さびれ」言説;明治期の「実利主義」言説と「江戸趣味」のさびれ;芥川の「さびれ」言説;「羅生門」の生い立ち;芥川と明治期の「ニーチェ」言説)
第3部 蛇を四寸ばかりづゝに切つて干したのを干魚だと云うて(明治期の廃仏毀釈;明治期の「廃物利用」言説;「政商・大倉喜八郎」言説と芥川の明治体制批判)
著者等紹介
荒木正純[アラキマサズミ]
1946年生まれ。東京教育大学大学院博士課程中退。静岡大学教養学部講師、筑波大学人文社会科学研究科教授を経て、筑波大学名誉教授・白百合女子大学教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかふく
1
著者はグリーンブラッド『驚異と占有』の訳者でもある。芥川については『芥川龍之介と腸詰め』を出している。本書は「羅生門」とその周辺テキストを何らかの表象するものの集積として見、作品が平安期に典拠を持ちながらも、明治期の状況を表象しているのだとする。具体的に扱われるモノは「蟋蟀」、「羅生門」、「さびれ」、「道徳」、壊れた「仏具」など。これらが当時の文献にどのように現れるのか見ることで、芥川がその「現象」で読者に何を想起させ、何を訴えたか(明治政府批判と結論される)を読み解く。2014/06/05