内容説明
革命期フランスの騒然とした時代に生きたひとりの哲学者の生涯と思索を、現代にいたる知の文脈のなかに位置づける。本論文では、著作と日記によりビランに語ってもらい、そこから自ずと浮かび上がる思索の歩みを跡付け、その特徴を明らかにした。
目次
第1章 ビラン哲学の成立(ビランとルソー;初めての著作 ほか)
第2章 ビラン哲学の発展―『心理学の基礎についての試論』(原初の事実から因果関係へ;調停的立場 ほか)
第3章 アポステリオリな立場―『自然の諸科学と心理学の諸関係』(自然の科学と人間の科学;因果関係についての一般的考察 ほか)
第4章 形而上学としてのビラン哲学(心理学から人間学へ;存在の類比と原因の類比 ほか)
第5章 ビラン最後の思索―『新人間学試論』『現実存在の観念についての覚え書』(文献成立の事情;先行研究の紹介 ほか)
著者等紹介
佐藤国郎[サトウクニロウ]
2006年、横浜市立大学大学院国際文化研究科博士課程修了、博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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内島菫
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ビランにとって心身合一の要は意識的知覚、つまり自我である。これは「内官の原初の事実」とよばれるが、自我はただ自我だけであるのではなく、いわば「一人の他人」としての身体の抵抗という外官と切り離されることなく二重にある。こうした自我の受動性をも含む能動性を出発点にして、ビランは終生アポステリオリスムを貫き、すべてを私たちの経験に基づいて思考し、生得的なものを自身の学に取り込もうとはしない。たとえ、自我に先立って形而上学的な実体があるとしても、自我にとっては自身の個別な認識による現象の把握が最初なのである。2021/04/29