内容説明
不気味な巨大船“ロブレド”を軸に展開される、生物と機械を巡る四つの物語。機械と生物が境界を越えて、互いを侵食する。機械部品は血肉と混ざり合い、肉体は毒に蝕まれて真鍮に変容していく。機械は毒薬によって死に、機械の命令で巨大な鳥が産んだ卵から生まれるのは機械部品。生物は金属に侵され、機械は生命の営みを行なう。砂の下に潜むのは屑鉄を食する奇妙な植物“錆喰らい”、そして勃発する機械と機械の戦い…イタリア賞、カシオペア賞受賞作品。
著者等紹介
トナーニ,ダリオ[トナーニ,ダリオ] [Tonani,Dario]
1959年ミラノ生まれ。作家、ジャーナリスト。ボッコーニ大学で政治経済学を専攻。2012年刊行の『モンド9』でイタリア賞とカシオペア賞を受賞。現代イタリアSFを代表する作家の一人
久保耕司[クボコウジ]
1967年福岡県生まれ。北海道大学卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すけきよ
31
錆と廃油と腐臭に彩られた『風の谷のナウシカ』。血肉を燃料にする機械、触れるだけで危険な毒の砂漠、鳥と機械のハーフ、屑鉄を食べる巨大な植物、生きながら肉体が金属化していく奇病……人間に厳しい自然なのは『ナウシカ』同様なんだけど、腐海や酸の海にある種の美しさや静謐さがあるのに対して、モンドノーヴェは醜く、グロテスクで、主人公たちには自由も希望もない。しかし、物語やそれぞれの説明よりも先に、異形の世界と情け容赦ない運命が目に飛び込んできて、「モンド」が連想させる悪趣味な見世物として一冊を支える魅力がある。2014/03/04
キキハル
20
荒涼とした惑星モンド・ノーヴェ。毒の砂漠を進むのは巨大な船。生物は金属化し、機械は血肉を得て生体となり、鳥が産んだ卵は船の部品となる。そして舟同士は戦い、呑み込み、解体され、砂中に沈む。血とオイル。人と機械。軟と硬の対比がとても鮮やかだ。特に二隻の船が邂逅した場面が印象深い。凄惨な戦いなのに不思議と静かで幻想的。こんな荒廃した風景に心を惹かれるのは何故なんだと思いながら夢中で読んだ。それはおそらく、日常からかけ離れた世界に耽溺する心地よさ。まあ現実逃避とも言うが。ともあれ、想像力を刺激する面白さだった。2014/05/01
ヴィオラ
16
そもそも「モンド9」が一体何処にあるどういった場所なのか?登場人物達が、何処から来て何処へ行こうとしているのか?本書では、そういう部分が結構ボカしてあって、それぞれのエピソードは、あくまで「点」に感じられるけれど、いくつかのエピソードを続けて読んでいくうちに、その「点」と「点」の間を結ぶ「朧げな線」が見えてくる。 イタリアSFもなかなか!「SFは絵だねぇ」というのなら、まさに極上のSFといって良いかも。 ところで、最初の章のタイトルだけ、何故「カルダニク」じゃなくて「カルダニカ」なんでしょうか?2014/03/08
波璃子
14
かなり異質なスチームパンク。荒廃した地球、毒の砂を進む船、金属に侵され食われていく人間。ビジュアルとしてあまりにも完璧。グロテスクで何の救いもないため人を選ぶ作品だとは思うが、ハマる人はハマる。2018/08/11
mayu
14
モンド9の世界に広がるのは毒の砂漠。砂漠の砂から身を守るため、人は機械船に身を隠す。機械船は人を受け入れるが搾取する。何故なら人は、機械船にとっての食糧であり、奴隷だから。鳥が産む卵からは機械の部品、体が金属化する疫病。この世界では、機械が自然を利用し、貪り、汚染する。機械と人間の立場が逆転しているというだけでなんてグロテスク。でもやっていることは人間と同じか、と思うと搾取される側から映る人間の姿は何と不気味で、恐ろしい存在なのだろう。2014/04/05