感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くろにゃんこ
40
石巻市にある雄勝病院。海を目の前にする場所での3月11日の真実が描かれています。壮絶です。「患者を置いて逃げられない」という病院ゆえの悲劇・・・というより「逃げる」という発想がなかった人々。津波に流され漂流した様子。被災しながらも働かずにはいられない看護師という職。それぞれの生前の様子などもとても丁寧に描かれているので尚のこと、涙なしには読めませんが、実際にあったことの記録として読んでよかった。忘れません。2014/05/22
最後の羅針盤
14
それでも。愛する人には生きて戻って欲しかったと思うのだ。突然喪ってしまった慟哭に、「生き延びることもできたのに」という悔いを重ねるのは更に哀しい。たとえどれだけのバッシングや罪悪感に苛まれたとしても、その時こそ私が身を挺して守るから。美談として讃えられることよりも、精一杯自分の身を守って生きていて欲しかったと思うのだ。そう出来ない人だから愛していたのだとしても。大きな声では言えないのだけれど。それでも。2015/07/23
ほっそ
8
あまりに生々しくて、地元民としては無意識のうちに、飛ばし読みしてしまいました。 石巻市民です。 地震後約30分でおそった津波。患者を見捨てて、高台に逃げることも考えず、患者さんのために最善を尽くし、屋上へ。屋上に津波が襲い、漂流した・・・・漂流物に乗っていたとしてもかなりの割合で、低体温症で死亡・・・ ★自分のブログに震災体験記書いてます。津波が来ない地区でしたが。2013/10/03
柴モモ
8
マスコミに取り上げらていない多くの震災の事実。この雄勝病院もその一つ。看護師や医師、病院に関わる全ての人たちが、動けない入院患者や病院を救おうと、自分の命を顧みることなく全力を尽くす。でも屋上でさえ飲み込んでしまう津波。シーツで患者を屋上に運んだけれど、安全ではないその場所に降ろすしかなく、自分の命さえ危険な状況なのに胸を痛めながら患者に「ごめんねえ」と声をかける看護師。非番で十分避難できたのに、病院にかけつけ命を落としてしまう看護師。読むのが辛いほどだけど、忘れないために読んでよかった一冊でした。2013/08/29
sasha
6
原発事故の混乱のなかで避難をした病院の記録も辛かったが、本書も辛い。「患者を置いて逃げられない」。住民に避難を促されても副院長は院内に戻った。医療従事者であるからこそ、何を置いても患者を守ることが優先なのだろう。それでも自然の猛威は容赦しなかった。患者40人は全員死亡、職員もわずか4人が生き延びただけ。屋上にいたはずの看護部長の遺体は3階の病室で発見されたと言う。彼女は最後の最後に、患者と共にいる為に屋上から3階に戻ったのだろうか。改めて、あの大津波の惨劇を思い知らされた。2016/03/15
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