感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
羊山羊
11
昨今のコメ騒動を見ていて、ふと再読。死屍累々、という言葉が思い起こされる。1986~1994年にかけて行われた、多国間通商交渉、ウルグアイ・ラウンドにおいて、重要な争点となった農産物、その中でもコメの交渉に身をやつした近藤元次という政治家にフォーカスを当てながら、その熾烈な交渉の一端をかい間見ようという1冊。さて、本中では、冒頭において、(農業交渉は)政治家が扱うには余りに専門的にすぎ、一方、官僚たちが裁くには余りに政治的すぎる」という言葉が引用されて、その世界の激しさを例えている。→2025/08/16
羊山羊
2
外交の難しさは外国との交渉だけじゃない。外圧と交渉した結果を、内に認めさせなくてはならない。この内と外の狭間に立ってギリギリの妥協点を探るのは、生半可な覚悟では出来もしない。ウルグアイラウンド・コメ交渉において、熾烈な譲歩を強いて来るアメリカと、それに頑迷に反抗し、「一粒も入れず」と吠える国内農水畑。この2つの間での調整に身をやつした人たちの視点から交渉を描いた傑作ノンフィクション。また、絶望的なまでの虚しさを覚えるのも本書。どれほど必死に戦っても、結果が出なければそれは犬死にと変わらない。2016/04/22