内容説明
小説と人形と。まず山尾悠子による「小鳥たち」という掌篇が書かれ、登場する小鳥たちを人形作家の中川多理が創作した。それを受け『夜想#中川多理―物語の中の少女』に続編「小鳥たち、その春の廃園の」が書かれ、再び呼応して新たな人形が作られた。さらに、最終章「小鳥の葬送」が書き下ろされ…。母、娘、そして侍女…風景も時間も揺らぎながら紡がれていく、芳しく神々しい幻想譚。
著者等紹介
山尾悠子[ヤマオユウコ]
1955年、岡山市生まれ。同志社大学文学部国文科卒業。75年、「仮面舞踏会」(「SFマガジン」早川書房)でデビュー。『飛ぶ孔雀』で、2018年、第46回泉鏡花文学賞、2019年、第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第39回日本SF大賞受賞
中川多理[ナカガワタリ]
埼玉県岩槻市出身。筑波大学芸術専門学群総合造形コース卒業。DOLL SPACE PYGMALIONにて吉田良氏に師事。2009年より個展多数。札幌市で人形教室を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
90
<水の城館>に棲まう不老不死の小鳥たちをモチーフに編み上がられた掌編集。「小鳥たち」のみが旧仮名漢字を使っているのが御伽噺の雰囲気をより一層、醸し出す。また、モチーフは同じでも他の二篇の印象が全然、違うので新鮮だ。飛び上がる編上げ靴に包まれた御足に感じるエロティシズム、いいよね!そして中川多理さんが制作した人形たちの中でも特に老大皇妃の人形が素晴らしい。それは深い哀しみと癒えない孤独、生きるために得た諦念、それでも滲み出る少女性とそれゆえの情念の激しさや儚さを体現した、最も美しい人形だからだ。2019/10/03
コットン
80
Pochiさんのオススメ本。山尾さんの本は今まで全て既読だったのだが今までと違う趣向(人形作家とのコラボ作品)に、山尾さん独特のゆったりと畳み掛けるような描写による幻想世界が作れるか?が、不安だったんで今まで読まずにいたが、これはこれで別物と考えると楽しい作品でありました。中川さんの人形も素晴らしく(特に老大公妃)、装幀(アートディレクター:ミルキーイソベ)も表紙の鮮やかさや遊び紙や綴じ糸がピンクだとか凝っていて本全体としてまとまりがあるのが良い。2020/07/10
かりさ
57
山尾悠子さんの歌集『角砂糖の日』に添えられた掌握作「小鳥たち」をいつでも愛でる事が出来て至福の心地。〈水の城館〉の侍女たち、華奢な編み上げ靴の少女たち、揺らめく時間と庭園風景…繊細な織りに艷麗彩る人形たち。永遠を閉じ込めた奇蹟の結晶。2019/08/19
ぐうぐう
29
『角砂糖の日 新装版』の付録として書かれた「小鳥たち」、「夜想♯中川多理 物語の中の少女」に収録された「小鳥たち その春の廃園の」、そして書き下ろしの「小鳥の葬送」を含む、山尾悠子の最新刊。「小鳥たち その春の廃園の」だけは既読だが、こうしてまとめて連作として読むと、山尾と中川のコラボの凄みを実感する。飛ぶために骨を空洞化した鳥とゴムを引くために内部が空洞構造になっている球体関節人形との同質性を感じていた中川と、(つづく)2019/08/12
Valkyrie
27
山尾悠子さんの作品の中でも読み易いほうかな。幻想的な静かで心地よい冷たさを感じる言葉で小鳥の侍女が飛び交う「水の城館」を出口まで迷うこと無く導いてくれる。読み始めは「なんでこんな人形の写真が多いの?」と感じてたけど、それは編み上げ靴の小鳥の侍女たちをイメージしたものと気がついて(遅い!)納得。老大公妃の葬送に合わせた喪服の小鳥の侍女の雰囲気のあること。老大公妃の人形は品があって、そして怖い。2019/12/29