目次
昔話の比較研究
第1章 ひとと動物との婚姻譚―動物の夫(動物が、あることの代償として娘を要求する;夜の来訪者;神の申し子)
第2章 ひとと動物との婚姻譚―動物女房(動物が娘の姿で妻にくるが、正体を見られて去る;動物が娘の姿で妻になり、正体を暴露されて怒って去る;動物が娘の姿をしているとき、むりに妻にされる;第一章と第二章のまとめ)
第3章 異類婚姻譚からみた日本昔話の特質
著者等紹介
小澤俊夫[オザワトシオ]
1930年中国長春生まれ。口承文芸学者。筑波大学名誉教授。東北薬科大学講師を経て、日本女子大学教授、ドイツマールブルク大学客員教授、筑波大学副学長、白百合女子大学教授を歴任。国際口承文芸学会副会長(現在名誉会員)及び日本口承文芸学会会長も務めた。現在、小澤昔ばなし研究所所長。「昔ばなし大学」主宰。2007年にはドイツヴァルター・カーン財団のヨーロッパ・メルヒェン賞受賞。2011年ドイツ・ヘッセン州文化交流功労賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nat
31
図書館本。世界の様々な異類婚姻譚について比較検討している。海外の人の考え方によると日本の「鶴の恩返し」は終わっていないと感じるそうだ。似たようなモチーフでも国によって色々なパターンに分かれていた。動物夫か動物女房かによっても違いがある。海外の昔話はキリスト教の影響を受けているか否かによって随分展開が変わってくるようだ。また地理的状況による影響もある。最後の日本の昔話の特質では昔話から読み取れる日本人の周囲の世界への強い警戒心が、現代日本人の世界との関わり方に受け継がれているという考察が導かれ興味深かった。2022/03/20
志村真幸
4
『世界の民話 ひとと動物との婚姻譚』(中公新書,1979年)をもとにした『昔話のコスモロジー-ひとと動物との婚姻譚』(講談社学術文庫,1994年)を復刊したものだ。 西洋と日本の異類婚を対比させつつ、文化や心性の違いにまで考察を広げている。「鶴の恩返し」が妻が去るシーンで終わるに対して、西洋では夫が連れ戻しにいくパターンが多いなど、話のスタイルがまったく異なるのがよくわかる。動物が人間に化けていたのがばれたときの反応の差といった切り口もおもしろい。 語り口にユーモアがあり、とても楽しい一冊であった。2021/11/29
のん@絵本童話専門
3
人間と動物が結婚する世界中の昔話を比較検討、そこから日本の昔話の特質が浮かびます。ヨーロッパは魔法で説明がつく動物との婚姻話、これはキリスト教的で実は少数派。日本は動物を動物のまま受け入れるものの、そこには感覚的な気持ち悪さによる拒絶や、正体を知られた際の別れがあり独特とのこと。これはヨーロッパでは伝説に見られる話なので、日本の昔話はおとぎ話ではなく伝説に感じるそう。そして、別れでお終いとなる結末は、話が完結していないように感じるそうです。何をもって文芸的満足を得るのか、民族による違いの説明が面白いです!2021/03/17
MOONIN
1
異類と婚姻関係になった人間が最後にまた一人になることで別の物語に接続していく…という読み解きが面白かった。日本の昔話は自然と人間の境界を強く意識して、異類とわかった存在を追放又は殺害、できない場合は防御措置を発明しなければ終われないというのも興味深い2023/08/26
だちょう
1
日本における異種婚姻譚についてまとめた本。海外からの学者の動物に対して残酷すぎる(容赦なく殺すので)、途中で終わっていないか?(別れで終わるので)というコメントが面白い。蛇との婚姻譚、古事記では神として扱われ子も神になっているのに、のちの昔話では、動物として扱われ子も堕されることの対比に神への畏敬が薄れているのをみるのはなるほどとなった。個人的に最後の方に出てくる、実際の昔話の「語り」がすごく良かった。淡々としたテキストとは違って、口での語りだとリズムや描写が生き生きしていて、全く違ったもののように感じる2023/06/03