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20世紀を拓いたゴム材料 - 発展の100年

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  • サイズ A5判/ページ数 237p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784902410044
  • NDC分類 578.2
  • Cコード C3043

出版社内容情報

<刊行のねらい>

 ゴムは現代社会の必須の材料である。ゴムがなければ機械を利用する工場は機能しないし,各家庭の便利な各種機器類の多くは使えない。また,現在の機械化された軍隊は存在不可能である。
 このようなゴムが何時頃発見され,最初はどのようにして実用に供されるようになったのかは分からないが,コロンブス一行が2回目にアメリカ大陸を探検した折りには,すでに現地人が天然ゴムを利用していたことが知られている。この天然ゴムがヨーロッパに伝えられ,その具体的用途が見出されず,長年の沈黙の後にその加硫技術の発見によって急速に実用化されるようになった。需要の増大に伴って自然に生えているゴムの木のみからの採取だけではその供給が追い付かなくなり,ゴムの木の栽培が行われるようになった。利用範囲が自動車タイヤへと広がり,自動車産業の発展に伴って益々その需要は増加し,栽培天然ゴムへの期待は大きく膨らんだ。
 さらに各国で工業化が進み,軍事的な理由も加わり,天然ゴムに頼らずに人工的にゴム様物質を生産しようとする動きも活発になった。合成ゴムを生産しようとする時,最初に考えるのはそのモデルを天然ゴムに求めることであろう。化学の進歩によって天然ゴムの化学構造が明らかになり,その合成が試みられたが,当初は原料コスト面で実用的に満足できるものが得られず,その類似体の製造が試みられた。この合成ゴムの初期の開発に大きく寄与したのはドイツであった。基本的にはドイツで開発された合成ゴム技術が,世界の合成ゴム開発の基礎となった。米国は政府主導の大規模な合成ゴムの生産に乗り出し,第二次世界大戦で日本軍に天然ゴムの主生産地域である東南アジアを押さえられ,その活動は活発化した。特に第二次世界大戦後に連合国が入手した大戦中にドイツが開発した合成ゴムの技術情報は,世界のゴム工業の発展に大きく寄与した。第二次世界大戦後は米国がリードした石油化学産業とエンジニアリング技術の発展でゴム合成原料の供給が容易になり,重合技術の開発が進み,機械産業,自動車産業の発達に伴う需要増に応えた各種の化学的,機械的特性を生かした特殊な合成ゴムが開発された。勿論,天然ゴムの生産も栽培農業化され,ゴムラテックスの産出量の豊かな品種に植え替えが進み,天然ゴムの生産量は著しく増大した。また,一時期天然ゴムと合成ゴムの競合に関する懸念も出たが,それぞれの特徴を生かして共に発展の道を辿った。そして,2000年の世界の新ゴム消費量は 1,814万トン,内合成ゴムは 1,078万トンに達した(IRSG)。
 ゴムは現代社会において極めて重要な工業材料であることは誰人も疑わない。ゴム工業は自動車産業の成長に大きく影響されつつすでに安定成長期に入っている。20世紀に一大発展を遂げたゴム成長の流れを振り返ることは今後の大きな発展を期待する者として非常に重要であると考えた。多くの間違いがあるだろうことを恐れずに纏めたのが本書である。御指導を戴ければ幸いと願っている。

      2004年10月                         著者


                     目   次


第1章 ゴムの始まり(1912年まで)
  1 天然ゴムとその利用
  2 栽培天然ゴム
  3 ゴムの加工
   3.1 加工技術の進歩
    3.1.1 初期の動き
    3.1.2 加硫技術の開発
    3.1.3 タイヤの製造
    3.1.4 その他の製品
    3.1.5 再生ゴム
    3.1.6 ゴム製品など
   3.2 日本のゴム加工業
    3.2.1 始まり
    3.2.2 ゴム薬品など
    3.2.3 ゴム加工品
  4 天然ゴムの科学
  5 合成ゴムへの胎動
   5.1 イソプレンの重合
   5.2 ブタジエンの重合
   5.3 メチルゴム:2,3-ジメチルブタジエンの重合
   5.4 その他の合成ゴム
   5.5 モノマー

第2章 本格化するゴム工業(1913年~1945年)
  1 天然ゴムの動向
  2 合成ゴムの誕生と成長
   2.1 メチルゴム
   2.2 Bunaゴム:数字Bunaと乳化重合Buna
   2.3 Government Rubbers
   2.4 その他の合成ゴム
   2.5 ソ連の合成ゴムへの動き
   2.6 日本の合成ゴムへの動き
   2.7 高分子説の誕生
  3 ゴム加工の発展
   3.1 欧米のゴム加工の動き
   3.2 日本のゴム加工の動き
    3.2.1 全般の働き
    3.2.2 工業組合,共販会社の設立
    3.2.3 統制会社の設立と企業整理
    3.2.4 学術関係の協会
    3.2.5 ゴム製品の動き(各論)
  4 ゴム薬品などの発展
   4.1 海外の動き
   4.2 日本の動き

第3章 合成ゴムの飛躍(1946年~1970年)
  1 第二次世界大戦後の合成ゴムの動きと各国での
      企業化(1946年~1960年)
   1.1 天然ゴムの動き
   1.2 米国の合成ゴム
    1.2.1 コールドラバーの登場
    1.2.2 油展ゴム
    1.2.3 国営工場の民間払い下げ
    1.2.4 シス-1,4-ポリイソプレンの登場
    1.2.5 その他の合成ゴム
    1.2.6 モノマー事情
   1.3 日本の合成ゴムの国産化
    1.3.1 合成ゴムの国産化計画
    1.3.2 シス-1,4-ポリブタジエンの開発
    1.3.3 その他の合成ゴム
    1.3.4 モノマーの生産
   1.4 その他の国の合成ゴムの動き
    1.4.1 カナダの合成ゴム
    1.4.2 西独の合成ゴム
    1.4.3 英国の合成ゴム
    1.4.4 フランスの合成ゴム
    1.4.5 イタリアの合成ゴム
    1.4.6 オランダの合成ゴム
    1.4.7 ソ連の合成ゴム
   1.5 ゴム加工
    1.5.1 欧米のゴム加工
    1.5.2 日本のゴム加工
     (A)原料ゴムの動向
     (B)ゴム加工品(各論)
     (C)ゴム加工会社の海外展開
     (D)安全・公害問題
   1.6 ゴム薬品,他
  2 溶液重合ゴムの本格化(1961年~1970年)
   2.1 天然ゴムの動き
   2.2 海外の合成ゴムの展開
    2.2.1 シス-1,4-ポリブタジエン
    2.2.2 シス-1,4-ポリイソプレン
    2.2.3 EPM,EPDM
    2.2.4 その他の合成ゴム
    2.2.5 モノマーの動き
    2.2.6 事故
   2.3 日本の合成ゴムの躍進
    2.3.1 溶液重合SBR
    2.3.2 シス-1,4-ポリブタジエン
    2.3.3 シス-1,4-ポリイソプレン
    2.3.4 アルフィンゴム
    2.3.5 ブチルゴム
    2.3.6 EPDM
    2.3.7 その他の合成ゴム
    2.3.8 モノマーの動き
    2.3.9 公害問題
   2.4 ゴム加工
    2.4.1 ゴム製品(各論)
    2.4.2 わが国の公害問題
    2.4.3 日本企業の海外展開
   2.5 ゴム薬品,他

第4章 ゴムの安定成長と国際化の時代(1971年~1990年)
  1 天然ゴムの動き
  2 合成ゴムの安定成長(1971年~1979年)
   2.1 海外の動き
   2.2 日本の動き
   2.3 海外展開を図る日本の合成ゴム
   2.4 環境問題と安全対策
  3 国際的な合成ゴムの再編成(1980年~1990年)
   3.1 合成ゴム企業の撤退と進出
    3.1.1 海外の動き
    3.1.2 日本の動き
   3.2 新しいタイヤトレッド用合成ゴム
   3.3 自動車の排ガス規制と合成ゴム
   3.4 熱可塑性エラストマーなどの本格化
    3.4.1 海外の動き
    3.4.2 日本の動き
   3.5 合成ゴムの新しい重合法
   3.6 その他の合成ゴムの動き
    3.6.1 海外の動き
    3.6.2 日本の動き
   3.7 公害・安全問題
  4 ゴム加工業の動き
   4.1 石油危機とゴム加工業
   4.2 ゴム加工業の国際展開
   4.3 使用済みゴム製品の活用
    4.3.1 海外の動き
    4.3.2 日本の動き
   4.4 公害問題
  5 ゴム薬品,その他の動き

第5章 低成長期のゴム(1991年~1990年代中頃)
  1 天然ゴムの動き
  2 ゴム事業の再編
   2.1 活発化する買収・合併
   2.2 日本企業の技術供与と海外展開
  3 合成ゴムの新しい重合法
  4 合成ゴムのその他の動き
   4.1 海外の動き
   4.2 日本の動き
  5 ゴム加工業のその他の動き
  6 使用済みゴム製品の活用
   6.1 海外の動き
   6.2 日本の動き
  7 公害・環境・安全問題
   7.1 合成ゴム関係
   7.2 ゴム加工・ゴム製品関係
   7.3 安全・毒性問題
   7.4 事故
  8 ゴム薬品などの動き

参考文献