出版社内容情報
光学技術や産業は、二十世紀前半の日本周辺に勃発した数多くの戦争と深い関係がある。日清戦争(1894~1895)、日露戦争(1904~1905)、第一次世界大戦(1914~1918)、満州事変(1931~1933)、日中戦争(1937~1945)、大東亜戦争(1941~1945)と続き、さらに朝鮮動乱(1950~1953)。光学機器は軍需品(双眼鏡、望遠鏡、潜望鏡、測量器、写真機、…)として当初は輸入に頼り,英国の艦上測距儀を模倣してみたが性能は不良でしかなかった(1915/大正4)
その後ドイツ技術者8名を迎えた(1921)が、3年後に2名(レンズ設計担当、製図担当)が死亡し、5名(機械技術・光学計算・曲面研磨2名・平面研磨担当)が帰国した。残る1名(製図担当)は7年間にわたり日本の技術者を育成してくれて、その後に光学産業が軍需性を帯びながら、順調に拡大発展した。平和を迎えた日本は米国占領軍の規制下で米国軍需に輸出するようになった。
当時の光学企業では、光学設計室に大勢の女子社員が対数表を読んでレンズ設計主任を補助していた。次第にコンピュータの時代へと進む(1955~)。現在、光学産業の結成は百数十社以上になり、電子カメラが発売され(1976~)、レーザ光線を活用する新時代へと進展している。
しかし妙な状況に度々出会った。数個のレンズで構成された光線長をミラーでジグザクに折り畳んで鏡筒が短縮でき且つ種々の光路長の機種を共通化できると、誇らしげに公表していたカタログを見た時だ。「光学素子の共軸性が保持されないよ」と注意したが無視された。一月後にそのカタログは見当たらくなった。
また、鏡筒の長さを統一できない企業では、20種類ほどの雑多な製品群になり、コストダウンに苦しんでいる。私の意見を聞き入れない。多数の企業で構成されている光学産業界の大多数は、製造の工程の一翼(開発・試作・組立)を担い自立心を養成してきたが、分業ネットワークはすっかり崩壊し、他見を受け入れない自尊心は堅過ぎる。高性能の軍用双眼鏡や写真機を製造していた中堅企業が、最近に倒産した事例もある。カメラの自動焦点技術に関して、著名な企業であろうとも、米国の特許所有権に精通できなくて14社が膨大な慰謝料を要求された特許紛争事件(1997)もある。
分業組織であろうとも全域を見渡し、知識を磨き知恵を駆使してゆく習慣が肝心である。光線束になった気持ちで本書を精読していただき、技術者の親身に役立つ事を期待しています。 (著者より)
1 光学材料・素子編
第1章 設計品質の検査
1設計品質 2設計品質の検査着眼点 3品質欠陥の発生しやすい箇所 4円錐曲線の理解
第2章 硝材の試験
1硝材 2板ガラス 3光学ガラス
第3章 光学プラスチックの性質
1光学プラスチックの材料 2光学プラスチックの性質 3光学プラスチックの光学特性
4光学プラスチックの吸湿性
第4章・レンズ ミラーの性質
1レンズの公式 2レンズの形状・大きさ 3特別な形状のレンズ・ミラーの性質
第5章 レンズ ミラー
部品の検査
1レンズ ミラーの加工工程の概要 2光学素子の取り扱い注意事項 3外観欠陥程度 4寸法の測定 5表面の測定 6偏心の測定 7円柱面の測定 8コート膜特性の測定 9異物質の検査 10接合レンズの試験
第6章 プリズムの検査
1プリズムの種類 2プリズムの性質 3プリズムの検査
2 機構部品編
第1章 鏡筒部品の検査
1光学的機械偏差の3因子 2間隔環 3押え環 4鏡筒
第2章 機構部品の検査
1寸法測定 2ねじ部品 3歯車 ラックの検査 4弾性体 吸着の検査 5プラスチック成形部品の寸法測定 6寸法の許容差 7幾何偏差による測定 8部組品の検査
第3章 レンズ系部品の検査
1鏡筒の連結組立方式 2測定項目 3照明方法 4幾何光学的な量の測定 5明るさの測定 6性能の検査 7偏心 8解像力の測定
第4章 シャッターの検査
1機能と検査項目 2取扱性の確認 3露出時間 4同調発光機構 5検査の記録
第5章 光学調整
1光学調整 2調整方法 3レンズ群の組合せ
関連参考文献
附表
日本の海軍装備とレンズ光学技術の発展
3 製造管理・規格編
第1章 品質の管理手法
1品質管理 2検査と判定
3数理統計 4管理 5無試験検査システムの導入 6信頼性 7保全とコスト 8信頼性試験
第2章 製造工程を生かす
計測・検査
1管理文書 2製品仕様書
3組織表・体制図 4工程管理 5治工具準備 6型品質確認表 7部品加工作業指導書
8部品品質確認表 9製造・組立 検査作業手順書 10製造確認表 11出荷検査成績書 12品質異常対策書
第3章・規格仕様書・ドイツ工業標準規格
1米軍仕様規格書(MIL) 2ドイツ工業標準規格(DIN)
第4章・光学と計測に
関する主な用語と参考図
1視覚と色彩 2色彩の表し方 3光と照明 4プラスチックの光学特性 5光線の挙動 6プラスチック材料 7光学系 8計測 9品質管理の用語 10生産管理の用語
著者/井上弘:
1932年に東京市の出身。横浜国立大学機械工学科4年生のとき化学工学を専攻。南満州鉄道で多大な技術活躍をなされた教授から「ハンコを押すだけの仕事をしていた高地位の人は、第二次大戦の終結で帰国したとき何もできなくて生活に困窮していた。君達はまず技術を身に着けろ」と教諭され、教授が設計施工された東京駅前・丸の内ビルの冷暖房設備も見学した。
卒業後、私は帝国人造絹糸(株)(現:帝人)に就職。多島美の瀬戸内沿岸に、従業員1万4千人の事業所が3つ。先ず、20人の部下を指導して多数並んだ紡糸・糸巻上機の保全業務にあたる。春・秋には松竹歌劇団を招待し壇上の乱舞を、近隣の住民も混じえて歓迎する好景気でした。然し間もなく風邪を長引かせ長期の入院3年間。退院しても体調不十分の処、従業員9名の極小企業だが親切な社長に拾われ、重油・液化石油ガスの移充填装置を独りで設計し和歌山県の大きな石油プラントで施工を遂行。市場寡占率60%にもなった。この2社でそれぞれ第一種冷凍機械と乙種化学主任者の国家資格を取得して終止符とした。
マイナスからの再スタート。転職先は従業員1200名の中規模企業:富士写真光機株式会社(現:富士フィルム)へ。以前とは真逆の社風・待遇だが、机面での仕事は体調回復に好適。初体験の光学技術を模索しながら設計業務に専念し、一方で計量士や技術士の国家資格も得た。定年退職後に光学ノウハウを著述し、国内外から光学知識の講義を依頼される。
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