内容説明
かつて子猫をくれた男の子、わたしの人生をすっかり変えてしまったあの男の子…少年の名はジェイコブ・ストルツといった。いまから書こうとしているのは、この少年の物語だ。二度のニューベリー賞受賞に輝いたロイス・ローリー待望の新作。
著者等紹介
ローリー,ロイス[ローリー,ロイス][Lowry,Lois]
アメリカを代表する児童文学作家。1937年、ハワイに生まれ、ニューヨーク、ペンシルヴェニア、東京などで少女時代を過ごした。1970年代から本格的に執筆活動をはじめ、数多くの作品を発表。『ふたりの星』(講談社)、『ザ・ギバー 記憶を伝える者』(講談社)で2度のニューベリー賞受賞をはたした
中村浩美[ナカムラヒロミ]
1965年、愛知県生まれ。名古屋大学文学部卒業
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
73
言葉は交わさなくても、つながりあえるということ。言葉で言わなくても、家族や動物たちを深く愛することができるということ。それを理解できる人と、それがまったく分からない人がいる。貧しい農家ストルツ家の悲劇。ネリーが美人であることを鼻にかけて野心を膨らませなかったら、残りの家族はジェイコブとともに幸せに暮らせたのに。それでも、ネリーは、貧しい庶民出身の少女のひとつの典型的でもある。2020/12/14
はる
56
好みの作品です。 20世紀初頭のアメリカ、町医者の父を持つ8歳の少女ケイティ。彼女の視線から、父の仕事や家族の生活、町で起こる様々な出来事を、優しくノスタルジックに描きます。少女の毎日の純粋な感情の描写がとてもいい。そして特に彼女の心を強く惹きつけたのが、心に障害のある少年ジェイコブ…。ラストはとても切ないものでしたが、深い余韻を残す物語でした。2018/01/18
ぶんこ
41
表紙の写真は心に障害を持つ少年ジェイコブ。この写真を見つけて興味を持った著者が綴った物語。ジェイコブと仲良くしようとするケイティと、言葉では表現できないけれど、気持ちが伝わってくるジェイコブの温かさ。ジェイコブの持っている生と死の価値観を思うと胸が詰まりました。ケイティと両親の健全さに救われる。切なさの感じられる白黒の写真に惹かれて、本文を読んだ後に何度も見返してしまいました。写真から想像する世界に共感を覚えます。2018/05/01
mattya
11
忘れられない一冊になりました。ケイティの語る一章一章が写真のように心に残っています。2016/10/15
星落秋風五丈原
10
物語の語り手は、ケイティ。彼女は孫にある話をしようとするが、子供達に止められる。その話には、ある少年、ジェイコブ=ストルツが出てくる。表紙の写真に映っている、やや所在なげな少年が、彼だ。大叔母の遺品から見つかったこの写真に興味を惹かれた事から、著者は、いくつかの写真を、母親が生まれ育った20世紀始めのペンシルヴェニア州を舞台にした一つの物語として結びつけた。医師の娘で好奇心旺盛だったケイティだけがジェイコブとコミュニケーションを取ろうとする。2006/01/12