内容説明
20年間で約130種以上が出版され、『ノルウェイの森』はミリオンセラー、『1Q84』は初版が120万部となった中国で、著者は初めて、全土にわたって、村上春樹が読まれる理由をアンケート調査した。いまや世界文学となった「村上春樹文学」を、新進気鋭の研究者が中国での受容の実態から批評する。
目次
第1章 中国における村上春樹文学の翻訳出版―一九八九年から二〇一〇年まで
第2章 翻訳出版・その時代区分
第3章 中国における村上春樹文学の影響
第4章 中国における村上春樹の読者―二〇〇八年実施の学生(三〇〇〇人)意識調査から
第5章 中国における「村上春樹熱」とは何であったのか
第6章 中国における村上春樹研究
第7章 中国の「村上春樹現象」と村上春樹の中国観
著者等紹介
王海藍[ワンハイラン]
1974年9月中国山東省生まれ。1997年7月山東師範大学文学部中国語中国文学専攻卒業。1997年8月~2003年8月山東省芸術学校助教を経て、山東芸術学院講師。2003年9月筑波大学図書館情報メディア研究科の研究生として来日。2007年3月筑波大学図書館情報メディア研究科博士前期課程修了、修士取得。2011年4月同研究科博士後期課程修了、学術博士取得。現在、復旦大学中国言語文学系「比較文学と世界文学」研究室ポス・ドク(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Atsumi_SAKURADA
1
「都市化がある段階まで進むと、その社会では村上春樹の本が読まれる」という言説(ハルキ指数?)があるそうですが、ここで論じられている中国における受容がそのモデルケースなのでしょう。興味深いのは、ブレイクスルーになったのが中国では日本と同じく『ノルウェイの森』である一方で、たとえばアメリカで初めに多く読まれたのは『羊をめぐる冒険』だということです。「村上春樹を通してみる比較文化論」という観点から見るのも、面白いのではないでしょうか。2014/03/23
kozawa
0
中国における村上春樹の受容について、著者は中国で生まれ育って村上春樹に触れ、本書の元になった博士論文を日本で書いた、と。指導した教官が「序」で指摘している通り事実関係調査は割としっかりしているが作品分析(批評)面とそれによる中国での受容についてはまだ浅いと指摘しているのはそうなんじゃないかと。中国内でのアンケートを各地の大学で取っていたり色々興味深い。とはいえアンケートは「大学」かぁ、いやまぁハルキなんだから大学層でアンケート取ればそれでいいいのかなぁとか思わなくもないが、ともかく非常に興味深く読んだ。2012/04/28