内容説明
新たな安全性のイデオロギーは、民衆の武装防衛の権利の消滅と彼らの法‐政治的アイデンティティの漸進的喪失とによって創造された空隙を満たすように定められている。これは市民社会の総体を軍事的安全保障体制―すなわちいわゆる「軍人の正義」の体制のもとに置くことに等しい。―現代人の生存を脅かす政治的危機の本質を衝く。
目次
純粋戦争
革命的抵抗
著者等紹介
ヴィリリオ,ポール[ヴィリリオ,ポール][Virilio,Paul]
1932年生まれ。フランスの思想家
河村一郎[カワムライチロウ]
1967年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程中退
澤里岳史[サワサトタケシ]
1968年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
2
偶発的で散発的な闘争としての初期の戦争。それを制圧するには組織だった軍事力が必要だ。そこで求められたのが「戦争指揮」だ。それは「人為的な環境条件」の創出だ。軍事要塞あるいは都市、機動力のための街道などをつくるための合理性の出現。やがて電撃戦を経て核戦争へ至ると、居ながらにして最速の戦争が実現される。すると、純粋戦争は実際の戦争を必要としない。それは「日常に浸透した軍事的審級」。例えば見慣れた基地のようなもの。あるいはダム、空港、原発、そして都市そのもの。それは実のところ生活空間の〈占領〉である。2020/09/30
Mealla0v0
1
戦争を戦争たらしめる指揮可能性を構成する媒介が、情報と技術であることを、ヴィリリオは見抜く。そして、それらが同時に純粋な力=「戦わずにして勝つ」力と為り得ることも。核兵器は世界を全面的植民とする一方で、戦争を抑止し、その帰結として戦争状態は日常生活へと解消される。つまり生が戦争化しているというわけだ。「日常のなかに永続する軍事的審級」、すなわち純粋戦争の最中にいる我々の抵抗は如何に可能か? それが民衆防衛である。今次、そうした抵抗はエコロジーと密接に連関する。全体主義的領土の速度に抗することができるから。2017/06/29
ハンギ
0
けっこうコンパクトな著書で、1970年代のためか最近の著書とは違って過激な文言が目につく。確か現代思想のヴィリリオ特集号にこの本の内容も入っていたと思うので、そっちも勧めたいです。(ただもしかしたら抄訳かも)純粋戦争とは、日常にまで染み込んでいる、軍事的な感覚であって、これを媒介にして人々は管理されると言いたいようです。後半で言いたいのは、現状に対する不満なのか、それとも暗い未来への警鐘なのか。ここでも指摘されているのは、情報の早さと伝わりやすさだと思うし、それに伴って変化して行く世界なんだろうと思う。2012/02/16