内容説明
ドゥルーズを触発した碩学ブレイエの高名な論考(1908年)の本邦初訳。数理物理学の衝撃のもとにある近代以降の唯物論とはまったく異なる初期ストア哲学の生物学的唯物論が提示する、存在と出来事を包括する自然哲学が“非物体論”として考察される。難解な論考の現代的意義を活きいきと開く訳者の長編解題を付す。
目次
初期ストア哲学における非物体的なものの理論(非物体的なもの一般について;論理学における非物体的なものと「表現可能なもの」の理論;場所と空虚の理論;時間の理論)
出来事と自然哲学―非歴史性のストア主義について(江川隆男)
著者等紹介
ブレイエ,エミール[ブレイエ,エミール][Br´ehier,´Emile]
フランスの哲学史家。1876年4月12日に生まれ、1952年2月3日に没す。第一次世界大戦に従軍し左腕を失う。1919年より没年までソルボンヌで教鞭を執り、1944年にはアンリ・ベルクソンの後任でフランス学士院の会員となった
江川隆男[エガワタカオ]
1958年東京都生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士課程退学。現在、首都大学東京都市教養学部人文・社会系研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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またの名
4
どう見ても『意味の論理学』の副読本。タイトル通りのテーマ。ブレイエの本文は割と古代哲学に則った記述だが、訳者の付論がドゥルーズにかなり寄り添っているので、こちらで現代哲学からの視点を補える。ドゥルーズ自身の悪文の不親切さは、こういう参考文献で補うしかない。物体の相互浸透に対して非物体的な出来事、定言命題に対して仮言命題、名詞に対して動詞、天上的なイデアに対して内部的な力をストア派は持ち上げる。2013/02/03
tottoro
3
表題の通り、初期ストア哲学における非物体的なものを巡る一冊。出来事と意味にはどのような関係があるのかなど、『意味の論理学』を補完するという点からも読まれるべき。また、付論も重要で豊かである。 個人的には把握的表象の果たす役割と空虚についての読解が課題である。2013/10/03