内容説明
随筆家、アイルランド文学の徒、歌人として、ふたつの名のあいだを翔け、日本とアイルランド、生活と想像世界を自在に越境した作家、初の集成。
目次
燈火節(或る国のこよみ;季節の変るごとに ほか)
随筆(かなしみの後に;御殿場より ほか)
小説(草団子;奥さんの日記 ほか)
童話(四人の坊さん;ペイちやんの話 ほか)
初期文集(明治期)(昔物がたり;新年望岳 ほか)
著者等紹介
片山広子[カタヤマヒロコ]
1878~1957。明治11年東京麻布に生まれる。東洋英和女学校卒。十八歳より佐佐木信綱に師事。大正初めよりアイルランド文学に親しみ、松村みね子の筆名でシング、ショウなどを翻訳。その才覚は、芥川龍之介に「才力の上にも格闘出来る女」(「或阿呆の一生」)と目され、「聖家族」「物語の女」など、堀辰雄の小説世界にも影響を与えた
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感想・レビュー
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yumiha
33
『ここに物語が』(梨木香歩)で紹介されていた本書。著者片山廣子(松村みね子)は、明治~昭和という時代を生きてこられた歌人&アイルランド文学翻訳者だが、その随筆、小説、童話などをまとめたもの。上流階級の婦人としてわきまえて暮らしながら(短歌も嫁入り道具のひとつとか、女の生命であり最大の希望である「お嫁に行く」とかいう価値観に驚いた)、それだけではなく「自分が男であつたなら」や「女の身であることを常に不満」などと小説に書いている。それは、たくましく想像力を働かせるとか鋭く世界を見抜く目を持っていたからだろう。2025/08/23
きりぱい
3
庭に池を掘られるという、戦時中の愛国にのぼせた風向きの苦々しさをやんわりと綴った文章に他で触れて、読んでみたくなった一冊。随筆集『燈火節』と、他随筆、小説、童話、初期文集、解題、長めの解説と、ミッション系の学校で向き合った聖書や西洋文学、歌人として、アイルランド文学の翻訳者としてなど、多様なたしなみが前面に出てくる作品が800ページあまりに収められている。文人との交流では、軽井沢滞在時に芥川が惹かれたM夫人だとか恋のいわくもある人。落ち着きと口当たりのよさに品のある文体。短篇では「赤い花」がよかった。2011/02/25
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- 和書
- 天上の葦 〈上〉




