内容説明
佐賀鍋島藩祖直茂、初代勝茂は、戦国の余燼くすぶる時代を生き、仕える家臣たちも、主君の馬前で討死して武士道の全うを願った。しかし、時代は大きく変わる。二代光茂は武断な家風を厭い、追腹(殉死)を禁止。自らは命を懸けて和歌を極め、古今伝授の秘伝を受け、超一流の文化人となる。光茂が没するまで懸命に仕えた『葉隠』の語り手・山本常朝は、命を懸けた覚悟ある生き様こそ、人の命が輝くことを伝えたかった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッキ@道央民
29
久々に読んだ歴史小説。今年直木賞を受賞した著者の作品を読んでみたいと思い図書館で借りて来ました。 佐賀鍋島藩の創成期。武断政治から文治政治に変わりつつある時代にあって、主君のために命をかけて忠誠心を捧げる家臣達の想いには頭が下がります。葉隠の語り手山本常朝の真っ直ぐなまでの生き方は男としても魅力を感じました。2013/07/08
ともくん
16
鍋島武士の教科書。 鍋島武士の矜持だ。 山本常朝『葉隠』を娯楽性に富み、且つ、分かりやすく、当時の武士道とは何か描いた。 武士道とは―死ぬことと見付けたり。2018/05/13
ピンクピンクピンク
9
『葉隠』は鍋島藩氏山本常朝が口述した初代藩主直茂から三代光茂までの間の鍋島武士、曲者達の昔語を筆録しまとめたもの。本書は二十三話からなる物語の頭に『葉隠』からの一節が引用され展開される構成。語られる「武士道」が潔く、義に暑くて格好良い。信義に心血を注いで生きた登場人物の様が実に爽快です。2017/06/14
makka
6
秀吉の九州平定前の鍋島藩藩祖直茂公から、山本常朝が葉隠を書き上げるまでの約140年間、曲者と呼ばれる奔放苛烈な鍋島武士たちの逸話を時系列に追って行く連作短編集。毎朝ありとあらゆる死ぬ場面を想定し、いつ命が終わっても構わないと覚悟を定め、死に身になりきって世に向かい合い、心の自由を得てあらゆる物事に自由に対応できるようにする。あとがきで著者がインスパイアされたと述べているが、自分も葉隠と言えば隆慶一郎の「死ぬことと見つけたり」。久々にあの未完の大作を読みたくなった。2014/11/05
ホン
4
佐賀鍋島藩の創成期を綴った物語 武断から文治への時代の流れを先読みした主君の先見性 家臣の主君に対する頭が下がるぐらいの忠誠心 これらがあったからこそ取り潰しの危機を幾度となく乗り越えられたようだ 決して順風満帆でなかった事がよくわかる2011/05/30