内容説明
日本人の自己欺瞞を蹴倒す安吾的精神、自ら自由人たらんとした未来の作家・安吾。『坂口安吾全集』月報連載170枚に重要評論を精選併録し、今こそアクチュアルな安吾の全体像を描く、柄谷安吾論決定版!単行本初収録250枚。
目次
第1部 坂口安吾について(或る時代錯誤;二つの青春;僧侶と堕落 ほか)
第2部(『日本文化私観』(一九七五年)
安吾はわれわれの「ふるさと」である(一九八一年)
堕落について(一九八八年) ほか)
第3部(新『坂口安吾全集』刊行の辞(一九九七年)
坂口安吾の普遍性(一九九八年)
“対談”新『坂口安吾全集』編集について/関井光男・柄谷行人(一九九八年))
著者等紹介
柄谷行人[カラタニコウジン]
1941年8月生まれ、思想家。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蔦屋重三郎そっくりおじさん・寺
65
坂口安吾を好きな柄谷行人が安吾を褒める本を安吾好きな私が読むというハッピーな予定調和である。興味のある回の『アメトーーク』みたいなもので、楽しいに決まっているのである。フロイトやらマルクスやら柳田國男やらを援用して安吾を褒める柄谷さん。無学な私も多少の違和感を感じる点がなきにしもあらずだが、人間、悪口も面白いが、好きなものを熱心に讃える方がより面白いものである。安吾は孤高の人ではなく、和して同ぜずといった感じの人であり、主流から外れても平然たる目茶苦茶腕力のあるドン・キホーテみたいな人である。いいね。2019/10/16
シッダ@涅槃
36
【未読部分あり】ホウボウで書いた安吾論の寄せ集めなので、読み切るという感じにはならない。けど刺激的だった。優れた作家は批評を豊かにする、と改めて思った。大昔に買った新潮文庫『堕落論』掘り起こしました。2018/03/17
テツ
21
柄谷行人による坂口安吾ファン会報誌(違う) 三島由紀夫による安吾評に「坂口安吾は、何もかも洞察してゐた。底の底まで見透かしてゐたから、明るくて、決してメソメソせず、生活は生活で、立派に狂的だつた」とあるけれど、こうしてなんとなく未来に悲観し暗くなりがちな今の社会だからこそ、この瞬間だけを見つめて無頼に生きる安吾のようなメンタリティが必要なんじゃないかと思う。暗くどんよりとした気分に沈んできもちよくなるのはただのオナニーだよな。それは洞察からの思考という流れからかけ離れている。2021/04/30
yamahiko
11
自身の必要からくる、それ自体が倫理的であるような「美意識」を時代に流されることなく価値基準として持ち続けた安吾という存在。柄谷氏の視点で再読してみようと感じた。2018/01/10
tokko
8
柄谷行人による坂口安吾評、こんな素敵な本があるなんて全然知りませんでした。偶然見つけたら買う以外の選択肢はないでしょう。全集で何度も読んだ「日本文化私観」などの評論をはじめ、「FARCEについて」「堕落論」たくさんの文章が引用され、安吾の特異性が論じられていきます。やはり太宰や織田作之助とともに「無頼派」なんていうカテゴリーに入れられていましたけど、一つのカテゴリーに収まりきらない大きさが安吾にはありますね。2024/12/18