エル・スール

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  • サイズ B6判/ページ数 131p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784900997219
  • NDC分類 963
  • Cコード C0097

内容説明

父の死を契機にセビーリャへと赴いた少女が出会ったものは…。内戦後の喪失と不安感を背景に、大人へと歩み始めた多感な少女の眼を通して浮かびあがる、家族の秘められた過去。映画『エル・スール』製作当時、エリセの伴侶として彼に霊感を与えたアデライダ・ガルシア=モラレスによる、時代を超えた成長小説。

著者等紹介

ガルシア=モラレス,アデライダ[ガルシアモラレス,アデライダ][Garc´ia Morales,Adelaida]
1945年、スペイン、バダホスに生まれる。その後セビーリャに移り、1970年、マドリード大学哲文学部哲学科を卒業。国立映画学校で脚本を学んだ後、中学校の教師、女優などを経て、1985年、第一作El Sur seguido de Bene(『エル・スール/ベネ』)をアナグラマ社から刊行。同年に刊行したEl silencio de las sirenas(『セイレーンたちの沈黙』)では、エラルデ小説賞を受賞。90年代に多産な執筆活動を展開し、今世紀に入っても新作を発表している

野谷文昭[ノヤフミアキ]
1948年、神奈川県川崎市生まれ。スペイン・ラテンアメリカ文学研究者、翻訳家。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部現代文芸論専修課程教授

熊倉靖子[クマクラヤスコ]
栃木県真岡市生まれ。清泉女子大学大学院修士課程修了。現在、清泉女子大学非常勤講師。スペイン語圏における幻想文学分野を研究テーマとする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

112
自ら命を絶ってしまった父親に語りかける娘の独白の形で、進行する小説。内戦後のスペインが舞台になっており、不穏な社会の雰囲気が物語の後景から伝わってきた。娘から見た父親の姿の描き方が新鮮だった。単に慕わしい存在だけではなく、謎めいていて、時には反発の感情を呼び起こす人物として描かれていた。他人にあまり心を開くことのない父親は、心の中に暗闇を抱えた存在として娘の目に映る。娘は父を救うことを願いながらそれを果たせないけれど、物語の最後では一筋の光が差し込んでくる。静謐で美しいスペインの小説。2014/08/30

アキ

84
巨匠ビクトル・エリセ監督の名作「エル・スール」の原作。一人称で語られる娘の父への心情が、美しい映像で表現されていたのを読みながら懐かしく思い出す。映画では父親の死後、父の育った街を遠いまなざしでエル・スール(南へ)とつぶやいて終えるが、この書ではその街セビーリャでかつて愛した女性とその息子ミゲルに会うまでを描いている。著者アデライダ・ガルシア=モラレスはかつてエリセの妻だった作家。スペインの南北で気候も文化も宗教も違うことを知った今だからこそ映画を再鑑賞してみたい。35年前とは違った印象を受けるであろう。2021/02/18

キムチ

67
終始、抑えた口調で語られる展開の時計は進んだり 巻き戻ったり。子育てをしていたころ観た表題と同名の映画はスペイン映画の中で最も好きな作品だが、細部の記憶は殆ど飛んでいる・・ただ、バックに流れる音楽と自然の風景、父親に惹かれ母親の想いが見えなかった位しか思い出せない。本では夫婦の捻じれた関係をくっきりとは言えぬまでも語っている。「南へ」と旅立つ少女、その成長の記録が朧気乍ら浮かび上がった。内戦後のスペイン敗北した共和党の家庭の在り様は日本人に取り映像と文字でのみ、伺うだけだが。長く続いた内戦、敗れた共和党2021/02/22

Tonex

32
ビクトル・エリセ監督の映画『エル・スール』(1983スペイン)の原作小説。映画の日本での公開は1985年だったが、原作小説は長らく翻訳されず、2008年のビクトル・エリセDVDボックス発売にあわせて2009年にやっと刊行されたもの。著者はエリセの奥さんだったこともあるスペインの女流作家。本作がデビュー作。▼父親の自殺の謎を探る少女の話。映画は見たはずだが、全然記憶にない。2015年にTSUTAYA発掘良品シリーズとして復刻レンタルされてるらしいので、機会があればDVDを見てみたい。今見たら面白いかも。2016/03/29

pico

20
一番のキーマン父親を“あなた”で示す少女の小宇宙は、そのシンプルで抑制された文体からも伺えるように、ストイックで纏足をはかせられているよう。行間から透明な歪みが滲み、ぞくぞくする。これをあのように演出したエリセの才能に改めて驚く。映像と原作と合わせ鏡のようになっているというひとつの愛の形に感銘。また、映画に描かれていない衝撃的なラストを想い頭がぐるぐるしてしまう。2009/07/21

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