内容説明
奇怪な事件、せり上がる謎。霧のボルドーから光の地中海へ、奇想とリアリズムが交錯する目眩のするような語りがあぶりだす家族の真実。大作家への道を歩むンディアイ、長篇最新作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
9
教師のナディアの夫が何者かに腹を抉られるという暴行を受けた。最近彼女は周囲からの悪意ある視線に気づいていたが、その原因が分からない。しかし哀れなヒロインと思えたものが、あっという間にどす黒い本性をむき出しにする姿は凄まじい。他者に対する悪意、無関心、侮り、さらには吝嗇や、自身のルーツへの憎悪とが相まって、かつてないほど存在感のあるヒロインとなっている。そして彼女の視点で語られる本作は、彼女の自己欺瞞な性格と相まって、その腐敗した精神の汚泥がドロリとねばつくようにページの端々から染み出てくるように感じる。2014/10/23
ののまる
8
この女性は一体何?何?と疑問符だったのだけど、読み進めるにつれて、今のフランスの移民社会・テロ恐怖の状況から…とっても意味深に読んだ。2015/02/26
mejiro
7
最初は故なき被害者に見える「私」の本性が徐々に暴かれる。悪魔が赤面するほど性悪で身勝手、完璧な反面教師である「私」がとても強烈で、一度読んだら忘れられない。人間をここまで醜悪に描けるとは…。なのになぜか厭な気分にならない。巧緻な文章、特に「私」を表す的確な言葉に感嘆する。話が進むうちに、彼女が気づかず、また語らないものが示唆され、一段と物語の深みが増す。謎めいた結末も腑に落ちる。現実に軸足を置くストーリーに怪奇なものが違和感なく溶け込む。読書の醍醐味を味わえた。 2017/06/22
chiro
2
初めて手にした著者の作品。題名から推す事でより理解を深めようとする事がこの作品を読了した段階での最もありきたりな術なのだと思う。フランス人にありがちな箴言めいた意図を素直に感じると共にその意とする事を伝えんとする手管の巧みさは素晴らしく物語に取り入れられた。少々複雑だけどこの展開はある意味ハッピーエンドと言えると思うし、こうした直裁的でない表現は斬新に感じた。2019/01/02
Samuel
2
著者の才能、かなりのものだと思う。「ロジー・カルプ」も傑作だった。もっともっと読みたい。2011/06/14