内容説明
父の死に顔に母がかけたという“豆絞り”の嘘とは?向田邦子は“軍人”が好きだった、というのは本当か。名作「かわうそ」のラスト1行にある“写真機”の意味。後年テレビで性を、それも“不倫”を主題にした訳は?向田ドラマの演出家であり、盟友でもあった著者が推理小説の手法で読み解く。
目次
第1章 昔の昭和がここにある―向田邦子と記憶
第2章 やってみたいが“私には出来ない”―向田邦子の倫理
第3章 豆絞りと富迫君―向田邦子の真実と嘘
第4章 男らしさへの嫌悪―向田邦子と戦争
第5章 もっと自由に、もっと辛辣に―向田邦子の小説1
第6章 神話的な構図―向田邦子の小説2
第7章 不倫、という武器―向田邦子と“性”
第8章 角栄と向田邦子―向田邦子と昭和五十年代
著者等紹介
鴨下信一[カモシタシンイチ]
1935年、東京生まれ。演出家。58年東京大学文学部卒業後、TBSに入社。演出したドラマ番組には『岸辺のアルバム』『想い出づくり』『ふぞろいの林檎たち』『高校教師』など、歴史に残る名番組が多い。向田邦子とは『寺内貫太郎一家』はじめ『幸福』『眠り人形』などでコンビを組んでいる。一方で『忘れられた名文たち』1・2(文藝春秋)で代表されるように、該博な知識と豊富な読書体験に支えられた“名文指南”にも定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
69
筆者は、あの事故の3か月前に対談で、お茶漬けが好きならご仏前に、とジョークを言って、寝覚め悪かっただろうな、と。(他の本で。この本にはそのことは書いてない) 向田ドラマは昭和の香り2021/10/25
ぐうぐう
30
久世光彦は彼女の言動から、まさしく人として向田邦子を綴った。対して鴨下信一は彼女の書いた作品から、向田邦子の心境を読み解こうとする。向田の脚本をドラマ化した演出家二人が、しかしこうも対照的なアプローチをするのかというのが面白い。読んでいると、向田の脚本やエッセイ、小説の文脈から彼女の意図を読み取ろうとする鴨下の姿勢は、どこまでも演出家のものだ。それは分析に近い。久世はあくまで人として彼女に向き合っている。(つづく)2020/08/20
おさむ
17
生前の向田さんと親交の深かった鴨下さんだけに、作品の読み方、論じ方がひと味違います。三類型に分けての分析や記憶力、倫理観、戦争体験。そして時代という追い風。全作品を読了している私にとって納得できる批評本です。2014/11/12
ちい
6
向田邦子について書かれた本は、多くある。本書は、同時代を生き、時代背景を考察の軸に据えたもの。どうだ、戦中戦後を知らない世代には分からんだろう、と言われているようだし、それを持ち出されたらお手上げだよね。向田邦子についての本を何冊か出した太田光を2箇所くらいさりげなくディスってあるし。「彼女のことは自分が1番分かっている」と思わせ、それを誰かにさりげなく自慢したくなるのも、向田邦子の魅力のなせる技か。2023/03/14
りえこ
6
向田邦子ファンで、つい読んでしまいました。本当は他の人が論じてるものはあまり好きではないですが、今回は演出をされていた鴨下さんということで、向田さんを知ることが出来、興味深かったです。2012/01/30
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- 和書
- ベルタ・ガルラン夫人